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巨人を優勝に導いた主将・坂本勇人。
圧倒的成績を生んだ「イチロー流」。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2019/09/22 11:50

巨人を優勝に導いた主将・坂本勇人。圧倒的成績を生んだ「イチロー流」。<Number Web> photograph by KYODO

5年ぶり37度目のセ・リーグ優勝を決め、大喜びでマウンドへ駆け寄る坂本勇人(中央)ら巨人ナイン。

大黒柱の自覚を身につけていった。

 それまでは阿部慎之助捕手や長野久義外野手(現広島)という年長者の陰で、やんちゃを繰り返していた末っ子が、いつの間にか兄たちが家督を次々と譲っていくことで、一家の大黒柱の自覚を身につけていったような感じである。

 ただリーダーの自覚が強くなると、そこには蹉跌も生まれた。

 それは「勝ったことのないキャプテン」という重い十字架だった。

人一倍「勝つこと」への渇望を抱く。

 坂本が主将に指名された2014年のV旅行を最後に、巨人は一度も優勝旅行に行っていない。坂本が主将に就任した2015年は、原監督の下で最後まで優勝争いをした末にヤクルトに敗れ2位に甘んじた。そしてその後の高橋由伸監督の下では広島の3連覇を許し、巨人は4年連続でリーグ優勝から見放されていた。坂本が主将に指名されたあの時以来、チームはハワイのV旅行に一度も行くことはなかったのである。

「やっぱり4年間、僕がキャプテンになってから優勝できていないということは、本当にプロ野球人生の中でも一番、しんどいことだった。主将を引き継いだ時にはそこまで多くを感じなかったですが、優勝できない日々が続いて、どうやったらチームが勝てるかを考えながらやってきました」

 人一倍「勝つこと」への渇望を抱き、勝つためにグラウンドに立ち続けてきた主将に、ようやくその瞬間は訪れた。

「監督が選手を鼓舞して引っ張っていってくれる姿は、一選手として心強く思って、監督についていけばいい結果が出るのかなと思い、その中で選手を僕が引っ張っりながら、プレーで引っ張って行きたいなと思って1年間を過ごしたシーズンでした」

 ただ一つ、キャンプテンとして足りなかった勲章を手にして、これで巨人は名実ともに坂本のチームとなった。

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坂本勇人
原辰徳
読売ジャイアンツ

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