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鳥谷敬の引退勧告は「冷たい」か?
ベテランの進退に求められること。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2019/09/12 11:45
今季は主に代打で起用されてきた鳥谷敬。今シーズン限りでの退団を表明した後も一軍登録は外れておらず、チャンスで登場する場面もあったが……。
松坂は現役続行も、去就は白紙。
鳥谷と同時進行するかのように来季の去就が動き出しているのが中日の松坂大輔である。9月1日に加藤宏幸球団代表と会談。鳥谷と違うのは、来季の契約についてドラゴンズは「白紙」であると言い続けていることだが、松坂本人はこの席で「来年も中日でやるのがベストです」と気持ちを伝えた。
現役への意欲という点では通じるが、現時点での球団の方針に違いがあるのは年俸面が理由だろう。松坂の推定年俸は8000万円。昨シーズン同様に手厚い出来高契約が結ばれているようだが、登板2試合で防御率16.88ではほとんどクリアしていないはずだ。
しかし、来シーズンへの期待値という点ではこちらも心許ない。肩よりも右肘の状態が思わしくなく、そもそも日本球界復帰後の5シーズンで戦力となれたのはカムバック賞を受賞した昨シーズンだけ。松坂の思いを球団がくみ取ったとしても、大減俸となるのは言うまでもない。
フロントマンの存在価値。
編成にも携わる中日球団関係者は、こんな見通しを語っている。
「投げられさえすればグッズが売れる、観客動員力もあるという声がありますが、実際に松坂の登板により、球団が潤った分はいくらなのか。精査する必要があります。そもそも人気があるから、グッズが売れるから契約しようというのが果たして正しいのか。他の選手との公平性を保つという意味もあります。極端な話ですが、球団には育成でもやる覚悟があるのかという声もあるのです」
松坂ほどの選手が現役続行を望んでいる。活躍する姿を見たいと思うファンもたくさんいる。
しかし、活躍しないことも考えるのがフロントの仕事だ。
その選手の実績に対してリスペクトを欠いてはいけないが、果断な対応をとらなければならない時期は必ず訪れる。「やりたいです」だけがまかり通っては、フロントマンの存在価値などなくなってしまう。「冷たい」「仕打ち」と選手を擁護したいファン心理もわからぬことはないが、村田修一や西岡剛(現役)もNPBから声はかからなかった。
選手本人も含め、もう少しドライになる必要はあるのではないだろうか。