草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
鳥谷敬の引退勧告は「冷たい」か?
ベテランの進退に求められること。
posted2019/09/12 11:45
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
これは生え抜きの功労者への冷たい仕打ちなのか。
それともせっかく用意された花道を踏みにじる行為なのか。
阪神の鳥谷敬の去就が取りざたされている。
はっきりしている事実を書くと、球団は8月29日に鳥谷と話し合いの場を設けた。鳥谷自身が説明した言葉を借りると、その席で伝えられたのは「引退してくれないか」という勧告であり「事実上の戦力外」。
球団から投げられたボールについて、鳥谷は「どんな選択をしたとしても、タイガースのユニホームを着てやるのは今シーズンが最後」と退団を明言した。
かけ違った両者のボタン。
その言葉を報道陣から伝え聞いた球団幹部は「まあ、要約すればそういうことになるんでしょうが……」と困惑していた。
球団としては周囲が騒ぎ始める前に、鳥谷にチームの方針を伝えたかった。あなたが納得してくれるのなら、長年の貢献にふさわしい場を用意したいと。それを意訳してしまうと「引退してくれないか」となる。そうだといえばそうだし、違うといえば違う。
タイガースは生え抜きの功労者だからこそ、立派な花道をつくり、ファンの拍手とともに送り出してあげたかった。しかし、鳥谷はそうは思わなかった。なぜならば「まだやれる」と思っている。
両者のボタンは、はじめからかけられる余地などなかったわけだ。
鳥谷は通算2082安打を放ち、タイガースの生え抜き野手としては藤田平に続く名球会入りを果たした。派手さこそないが、黙々と出場を続けるフィジカルの強さ、それを支えるストイックな姿勢は阪神ファンには周知の事実だ。
その一方で今シーズンは、9月11日のヤクルト戦でようやく初打点を記録したものの、17安打、打率.205にとどまり、本塁打はまだない(9月11日現在)。