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「どうしたらいいかわからない」
阪神・鳥谷敬が吐露した弱音。

posted2019/09/02 15:00

 
「どうしたらいいかわからない」阪神・鳥谷敬が吐露した弱音。<Number Web> photograph by Kyodo News

8月31日、自ら「引退勧告」について語った鳥谷。その後の巨人戦ではベンチから試合を見つめていた。

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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Kyodo News

「初めての経験なんですよね。どうしたらいいかわからない。これが本音です」

 今年の夏に入る頃、鳥谷敬がゲーム前に吐露した言葉が忘れられない。

 プロの世界に入ってベンチスタートの選手として迎えるシーズンは彼にとって初めて。プロ16年目の日々は毎日が手探りだった。

「これまでは試合に出て、身体の状態が確認出来て、課題が生まれて、試合前後の調整法や心の持っていき方を考えることが出来ました。今年は……試合に出ないという中でどう自分を整えるか。毎日が難しい。でも身体は元気なんですよ、ほんと」

 怪我をしていても、精神的に苦しくとも自分の弱い部分を見せて来なかった人間。学生時代からそうだった。

初めて弱い部分を見せていた。

 東京六大学で1年生から早稲田大の中心選手として名を馳せ、僕は慶応大時代、慶早戦で相手チームとして何度も鳥谷敬の存在の大きさを肌で感じてきた。常に冷静で凛としている。表情は全く変えない。時には冷たくも感じるほど沈着した選手が鳥谷。

 そんな彼が悩んでいた。珍しく、いや、初めて弱い部分を見せていた。

 この変化に大学時代から彼を見てきた僕は驚いた。

「いい方法があったら教えて欲しいくらいです。この状況で結果を残す術は何なのか。やっぱり僕は日々、起用してもらってきたからこそ結果が出た選手。1試合、1カード、1カ月、1シーズンというトータルで見てもらった時に意味をなす選手だったんです。

 代打で、1打席で、1度の守備機会や走塁機会で結果を残すにはどうしたらいいか、どう自分と向き合えばいいか、まだ答えは出ていないんですよね」

 密かに走り込みを増やし、身体によりキレを出そうとトレーニングに取り組んできた2019年シーズン。

【次ページ】 糸井も驚くトレーニング量。

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