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八村塁不在でも日本バスケに見たい、
アメリカ戦・馬場雄大のような姿勢。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYukihito Taguchi
posted2019/09/07 11:50
八村塁(左)が完璧に封じられた中、気を吐いた馬場雄大。アメリカとの実力差を味わえたことは今後に生きるはずである。
今回はラマスHCにも責任がある。
速い展開からの攻撃が失われた結果、個人の力で打開する割合が増した。それはつまり、エースの八村塁への依存度をさらに高めることにつながった。
ただ八村といえども、さすがにアメリカ代表の猛者をねじ伏せることはできなかった。八村がA代表で最少となる4得点に終わったのは、そうした事情もはらんでいた。
ラマス体制になってから最大の53点差で敗れた背景には、世界最強のアメリカが相手だったからという一言では表現しきれない経緯があったのだ。
ラマスHCは大会前から、過剰な期待や楽観的な展望に対して、くぎを刺していた。
「期待を抱いてくれるのは嬉しいですが、強豪と戦うことの意味は理解してもらいたい」
ただ結果的に多くの選手が迷いを抱え、チームとしての欠点は改善しないまま大会に入ってしまったのは事実だ。渡邊と八村の合流は8月からだったが、7月から入念な準備をしてきてこの内容と結果は、指揮官にも責任がある。来年のオリンピックで、今回のような過ちを犯してはいけない。
チェコ戦で悔しさを味わった馬場。
ただ――。
そんなアメリカ戦でも見えた光があった。馬場の奮闘である。
彼の活躍の伏線は、チェコ戦の敗戦後にあった。
いつも相手の目を見て、投げかけられる記者の質問に真摯に答えていく馬場が、あの試合後だけは声をかけても、足を止めずにロッカールームに入っていた。悔しさを押し殺すように……。
そして翌日、アメリカ戦の前日に彼はこう宣言した。
「この2試合、すごく落ち込みました。消極的に戦った上でミスがあって……。リングにアタックすることや得点することを考えず、周りの選手のマークが空いているかどうかなど、パスを探したところもありました。明日はアメリカ。負けてなんぼの気持ちで、自分のバスケを遂行したい気持ちです」
アメリカ戦で、馬場はひとり気を吐いた。18得点はチームトップの成績。それとともに、3つのスティールも記録した。誰が見ても、この試合における日本のベストプレーヤーだった。