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日本人対決で菊池雄星を圧倒!
田中将大が見せた「残像」の妙。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byKYODO
posted2019/09/05 18:00
マリナーズ・菊池との投げ合いは、7回無失点に抑えた田中が制した。
2球目の直球が布石となった。
マスクを被るロマインのサインに頷いた田中は、再び直球を外角に決めて一気に追い込んだ。前の2打席でカットとスライダーを打ちに出ている相手の気を削ぐと、最後は外寄りに滑る136キロのスライダーで空振りを奪い3球三振に仕留めた。
2球目の直球が布石となった配球の妙。田中は弾む語気で簡にして要を得た説明を加えた。
「2球目の直球が生きたことは確かですよ。最後の空振りも、その残像を打者に植え付けたのはあると思います。思い切り振っていたように見えましたが、100%のスイングだったかといえばそうではないと思う。それ(残像の効果)はあると思う」
「自分なりに意図を持って投げていた」
直球とスライダーの2球種で3球三振を奪う配球パターンは8通りある。田中とロマインが紡いだのは、すべて直球のパターンに次いですぐに浮かぶものだが、一球一球打者の反応を見てその心中を見透かした観察眼が生きた。
試合後の囲みで田中の口調が最も滑らかになったのは、やはり、勝負を制していった配球だった。
「サイン通り投げるにしても自分なりにしっかり意図を持って投げてはいたので、今日はそれが上手くいってよかったです」
思えば、菊池は田中との初対決を前にした2日前のブルペン調整後、強打のヤ軍打線への秘策を問われて「持っているボールをどう使うかで勝負をしないと難しい」と表情を引き締めた。試合を経て、「勝つために必要なもの」として、持ち球を「どう組み立てるか」もしっかりと刻み込まれたに違いない。
9月2日(同3日)、田中は本拠地ニューヨークでのレンジャーズ戦で黒星を喫したが、今季163イニングに到達し年間162の規定投球回を2年ぶりにクリア。若手のサンチェス捕手を牽引した6回2失点の粘投だった。