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武藤敬司56歳、どう生涯現役を貫く?
挑戦し続ける“サイボーグ化”した体。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/09/03 19:00
同期や後輩の多くが現役引退をする中で、「生涯現役」という看板を掲げて輝き続ける武藤敬司の存在は異色だ。
少しサイボーグ化した体で「生涯現役」。
少しサイボーグ化した体で「生涯現役」を掲げる武藤だが、言葉とは裏腹に大変な部分もある。
「やっぱりヒザの不安もあったし、恐怖心もあるから。その不安を乗り越えるっていうのはなかなか大変ですよ。家族に支えてもらっている部分もある」(武藤)
ヒザの人工関節に負担のかかる十八番のムーンサルトプレスは医師の指示により封印した。だから、もうムーンサルトプレスを放つことはない。そして新たな武藤スタイルを探しながら「生涯現役」を目指す。
「前から言っている引き算のプロレスをどこまで磨くか。技を少なくしてもファンを魅了できるスタイル。そこを極めていかなくちゃならない。そのパイオニアとしてオレがやることで、たぶん他のレスラーもマネしてくると思う。そこにもオレは挑戦していきますよ」
「挑戦していかないと退化するからね」
だが、引き算ばかりしていたら、最後はゼロになってしまう。だから、武藤は「もちろん足し算もやりますよ」と言った。
「でもね、シャイニングウィザードにしても、ドラゴンスクリューにしても、4の字にしても、お客さんに定着しているから、それを超える説得力のある技を作るのは至難のワザだよ。でも挑戦していかないと退化するからね」と武藤は自分に言い聞かせた。
スペース・ローン・ウルフ時代の武藤の写真がスクリーンに映し出された時には、客席から「若い」という声が聞こえた。
武藤はデビュー35周年記念と銘打たれた試合の印象を語った。
「(W-1の若手がセコンドにいたにもかかわらず)オレのところだけはなんとなくW-1と関係ない空間で、この空間って35年の歴史の中の数ページだったような気がするね。テーマがあった。生涯現役のために、この3日間で2試合というのはすごく自信になった」