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恩師が明かす渋野日向子の高校時代。
一度だけ叱った「OLになります」。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byToshihide Ishikura
posted2019/08/23 11:30
作陽高校ゴルフ部の田渕潔監督。支援者が作成したという記念看板とともに笑顔で写真に収まった。
揺れる渋野に叱咤した田渕氏。
渋野は2015年夏の全国高校ゴルフ選手権の団体戦で、2008年に続く同校2度目の優勝に貢献している。メンバー5人中4人が3年生で、唯一の2年生。そのうちの4人が出場し、2日間ラウンドして上位3人のスコア合計で争われる大会で、チーム3番目の成績を残した。
3年生のときはキャプテンを務めた渋野に、田渕氏は「何かを言った記憶は、ほとんどない」と話すが、「一度だけ怒ったことがある」という。
前述の通り成績も優秀だったので、高校卒業後は大学に進むのだと田渕氏は思っていた。だが本人は予想に反して「プロになりたいです」と思いを明かす。
「それはいい、自分で決めたのなら、いろいろな形でサポートするよ、と言っていたんです。それなのに……」
渋野の心は揺れていた。
「1カ月後くらいに『やっぱりプロにはならず、ゴルフ場に就職して普通のOLになります』と言ってきたんですよ。迷っていたんでしょうけど、『自分で決めたのだから、頑張らないとダメだよ』と怒りました。ゴルフ部の後輩たちもプロを目指す渋野の姿を見て、頑張ろうとしていましたからね」
プロテスト不合格からのメジャー制覇。
思い直してプロを目指したが、卒業1年目の2017年はプロテストに合格できなかった。
「落ち込んだ様子だったので、『そんなにスムーズにはいかないよ』『来年の合格を目指せ』と言いました」
女子のプロテストに合格できるのは年間20人という狭き門だが、翌2018年に合格。今年に入ると5月にツアー初優勝、7月に2回目の優勝を果たし、8月に初の海外挑戦でメジャー初制覇を成し遂げた。あまりにも急激な上昇曲線に、田渕氏も驚きを隠せない。
「今回、初めて海外メジャーに出場するときも『頑張れよ』と言いましたが、何回かは挫折するだろうと思っていました。いきなり優勝するなんて、常識では考えられません」