ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
G1後に待っていたクライマックス。
鈴木みのるが派手技を解禁した意味。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2019/08/19 17:00
G1落選の悔しさを、オカダ相手にぶつけた鈴木みのる。満員の武道館に「みのるコール」が沸き起こった。
オカダを仕留めた派手技。
何よりファンを驚かせたのが、フィニッシュへの動きだ。
鈴木はロープに走ると、オカダに対してメキシコのスター選手ミスティコの得意技ラ・ミスティカの要領でオカダの首を支点に回転。あっという間にバックを奪うと、そのままスリーパーホールドから必殺のゴッチ式パイルドライバーを決めて、IWGP王者から完璧な3カウントフォールを奪ったのだ。
鈴木みのるといえば、殴る、蹴るといった原始的な攻撃と、若手時代の新日道場から、UWF、パンクラスなどで磨き続けた各種関節技を駆使して闘い、派手な技はほとんど使わないレスラー。
そんな鈴木が、ここでルチャ・リブレの高等技術を、長年磨き続けた技のように、“自分の技”として鮮やかに使ってオカダを仕留めたことは、ファンに大きなインパクトを与えた。
「みんなが動くのであれば動かない」
ただし、これは鈴木の“新技”というわけではない。“引き算のプロレス”を信条とする鈴木は、やろうと思えば、空中殺法でもスープレックスでも使えるが、本当に必要な技しか使わない、というこだわりがある。かつて、ぼくが行なったインタビューでは、次のようなことも語っていた。
「いまのプロレスのトレンドとして、オカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也、飯伏幸太らがそうであるように、ヘビー級でありながら、ジュニアの動きだったりルチャの動きができる選手が上にきてる。そこで俺がピンとひらめいたのは、それを徹底的にやらないってこと。みんなが動くのであれば動かない。そうすれば俺が一番目立つから」
こうしてあえてルチャ的な動きを使ってこなかった鈴木だが、できないわけではない。ここぞ、という必要な時に必要な技として使い、見事にIWGP王者を仕留めて見せたのだ。