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新しい地図・稲垣吾郎×車いすラグビー。
日本代表選手が語る、戦略と言霊。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAsami Enomoto
posted2019/08/02 07:00
稲垣吾郎に車いすラグビーの魅力を語った(左から)乗松聖也、倉橋香衣、池透暢。
ベストゲームはアメリカ戦の勝利。
池 ポジティブな意見を聞いて、チームの雰囲気がどんどん良くなりました。結果、すごく集中して、僕が代表に加入してからは公式戦で勝ったことがなかったアメリカに、5点差で勝利しました。あの試合は、僕の中でこれまでのベストゲームです。
乗松 アメリカにはリオパラリンピックの1次リーグで負けた苦い経験があるので、リベンジできて良かった。それ以降、僕の所属チームでも、試合前に「いいところを出しあう」やり方を取り入れるようになりました。
稲垣 いいですね。言霊というか。このミーティングの話、個人的にすごく好きです。今お話に出たリオは池選手、乗松選手にとって初めてのパラリンピックですよね。やっぱり独特の緊張感がありましたか。
乗松 観客の多さも普段の試合とは桁違い。接戦の状態で交代に入るときは「なんでここで? 僕のせいで負けたら……」と思うこともありました。
池 僕は実はそんなに緊張しなかったんです。色々な方から「パラリンピックはほかと違う、パニックになるよ」と言われていたので「すごく緊張している自分をどうやって立ち直らせるのか」を何度もイメージして本番に挑みました。もともとパニックになるタイプではないのですが、準備のおかげもあり、落ち着いてプレーできました。
稲垣さんはたくさんのお仕事を日々こなしていらっしゃると思いますが、仕事への準備はどのようにされているんですか。
適当でいることも大事ですよ(笑)。
稲垣 僕の仕事は同時に色々なことをこなさなくてはいけないので、「切り替えの仕事」だと思っています。ひとつの仕事に準備をかけたいけれど、時間的にかけられないことも多い。
もちろん真剣に向き合っていますが、演技の“型”の話と同様で、ときにはある種の“適当さ”も必要。目の前のことに瞬時に対応できるように、ひょうひょうとやるようにしています。本来、僕はしっかり準備をして地道にブラッシュアップさせていくような作業が好きなんですけどね(苦笑)。日々同じことをしても全く飽きないですし。スポーツ選手も同じ練習を繰り返していますよね。
池 そうですね。僕は逆に「あれもやりたい、これもやりたい」というタイプなので、実は毎日同じことをするのは辛いのですが。
稲垣 ときには適当でいることも大事ですよ(笑)。来年の東京は、きっと客席が日本人で埋め尽くされますね。
倉橋 パラリンピックはコートで選手同士の声が聞こえないくらい、すごい歓声だよ、と聞いています。今は東京を目標に頑張っていますし、すごく楽しみです。