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錦織圭が残した興味深いコメント。
「焦ってしまう」BIG3の圧力とは。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2019/07/12 12:00
1セット目終了時点では錦織圭のペース、かに見えた。しかしそこから本領発揮してきたフェデラーは、やはり強かった。
ジョコ戦でもしばしば聞かれる表現。
焦ってしまった、という言葉は、例えばノバク・ジョコビッチとの対戦を振り返る中でもしばしば聞かれる。普段はあれだけ沈着冷静に戦術を遂行する錦織が、なぜフェデラーやジョコビッチには「焦る」のか。
つまりそれが、ラファエル・ナダルを含むビッグ3の圧力なのだ。
圧のかけ方は個々に異なる。フェデラーは早い攻めで圧力をかけてくる。自身のサーブからの、いわゆる「3球目」、グラウンドストロークの最初のショットで急襲をかけるのだ。大胆に前に入り、角度のあるショットを打たれると、錦織はどうすることもできなかった。
錦織のサーブに対するリターン、すなわち「2球目」にも非常に厳しいボールが来た。なかでも、サーブを打った錦織の足もとをえぐるような、深い高速リターンに苦しめられた。フォアハンドの握りが厚い錦織にとって、この食い込んでくるボールは最も苦手なショットだ。
こうして、2球目、3球目で厳しく攻めてくるのが脅威となったのは間違いない。
フェデラーの厳しいサーブとリターン。
大会では、9本以上の長いラリー、5~8本の中程度の長さのラリー、4本以下の短いラリーに分けて得点を集計し、公開している(ショット本数にはサーブとリターンを含む)。
この試合、4本以下のショットで決着したラリーでは、フェデラーが107ポイント、錦織が81ポイントと大差がついた。フェデラーのサーブとリターンが厳しく、それを生かした早い攻めが機能したことが分かる。
そして、その早い攻めが、やられる前に自分も行かなくては、と錦織の焦りを誘うのだ。
今大会の錦織はネットに出てボレーで決める場面が目立ったが、この試合では39回ネットに出て22得点と、ネットでの得点率は56%にとどまった。