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“ハイリスク”なマリノスを支える、
GK朴一圭の視線が気になって観察。
 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/07/13 08:00

“ハイリスク”なマリノスを支える、GK朴一圭の視線が気になって観察。<Number Web> photograph by Takahito Ando

ハイライン、ハイプレスを掲げるマリノスにおいて欠かせない存在となったGK朴一圭。今季、FC琉球より加入した。

アンカー喜田との関係は「動脈」。

 特に彼と喜田拓也のラインは「動脈」と呼べるほど、今のサッカーに欠かせない命綱になっている。喜田は朴との関係性をこう語っている。

「チームとしてラインを強気に上げたいので、そうなるとGKのカバーエリア、出るタイミング、出る・出ないの判断がものすごく重要になってくる。もしGKが出てきて、お見合いになってしまったら、それこそ即失点。それは共通理解がないといけない。

 僕は守備時はパギくん(朴の愛称)がどこにいるか、どこにポジションを取ろうとしているかを意識して見ている。その上で自分の立ち位置を変えるようにしています。パギくんが最終ラインに入るんだったら、僕はまた別のポジションを取るし、パギくんが次のプレーに備えたポジションを取ったら、さらに僕のポジションをずらす。それを意識しています」

 つまり、朴のポジショニングはチーム全体において非常に大きなウェイトが置かれている。彼がどうプレーに関わるかは、チームの生命線であるビルドアップの重要事項の1つとなっている。

 それだけに朴のポジショニングがずれたり、タイミング、パスの質が悪ければ、攻撃の構築でつまづく。さらにボールを奪われれば、たちまち相手のショートカウンターを浴びる。

 当然、横浜FMと対峙するチームは彼らのハイリスクハイリターンなサッカーを理解している。それを逆手に取るようなショートカウンターや、裏のスペースを狙った攻撃を画策してくる。それだけに、GKとの連係の質はより高いものが求められるのだ。

前半だけで50回振り向いた朴。

 では、朴はどうやって「高性能GPS」を発動させているのだろうか。

 彼のプレーを注意深く見続けると、ゴールを振り返る回数の多さと、そのタイミングの“法則”を見つけた。J1第17節のFC東京戦(2-4で敗戦)後、気付いた点をこうぶつけてみた。

――ゴールキックエリアから外に出てスペースをカバーするときに、ゴールを見る回数をここ3試合数えていました。その中で今日(FC東京戦)の前半だけで50回も見ていましたね。

「自分の中で一度後ろを見てから、距離感を図るというのがあって、(ゴールを)見てから前へ出ることを意識しています。僕はただ前に行くのではなく、斜め前にポジションを取るようにします。それは下がったときに一直線にゴールに戻れるようにするためです。その過程で今、自分がどこにいるのか確認するために、常にゴールを意識してポジションを取るようにしています」

――どのタイミングでゴールを見るかを意識的に見ているんですね。マイボールの時はあまり見ずに、相手ボールで深い陣形のときに見ている、そういった法則的なものを感じたのですが、それはいかがですか?

「ウチはハイラインなので、相手陣内の深いところからロングボールを蹴られることが多い。そのときに僕がグッと出ていかないといけない。その状況になったときに自分が今どこにいるのか、仮に出られなかったときに、どれくらいのスピードで戻らないといけないのか。それを測るために何度も振り返って、自分の立ち位置がどこなのかを確認しています」

――他のGKを見ると、回数はダントツで多いです。

「自分の中でも、(他の選手よりも)見ているという自覚はあります」

【次ページ】 「ライン」を見て距離感を掴む。

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