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武居由樹、K-1の2大エースへと飛躍!
驚異の殺傷本能を支えたものとは?
posted2019/07/07 11:45
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takao Masaki
K-1のプロ興行で毎回、行なわれているワンデイ・トーナメントは選手たちを激しく消耗させる。なにしろヘッドギアなしで顔面パンチあり、ノックアウトルールの試合を1日で最大3試合行なうのだ。すべて延長戦になれば12ラウンド。ボクシングの世界戦と同じだが、こちらには蹴りがある。
勝ち上がりによる対戦の妙や、ケガをはじめアクシデントも含めたドラマ性で盛り上がりやすいとも言えるワンデイ・トーナメントだが、王座決定トーナメントに限定するなど、できれば必要最小限にとどめてほしいところだ。選手が疲労困憊の中でキャリアに影響する負傷をしないとも限らない。
武居がテーマなきトーナメントを“成立”させた。
6月30日の両国国技館大会、そのメイン企画は『スーパー・バンタム級世界最強決定トーナメント』だった。同級王者である武居由樹もエントリーする8人制トーナメントである。ベルトがかけられているわけでもなく、挑戦者を決めるものでもない。「最強決定」と銘打たれているが、しかし最強はチャンピオンのはずではないのか。
スポーツとしての正当性よりも興行的な意味合いばかりが感じられてしまうのだが、にもかかわらずこのトーナメントは見事に“成立”していた。この階級最強の存在として勝たなければいけない武居が、桁違いの実力で優勝したからだ。
アレックス・リーバスとの1回戦、玖村修平との準決勝は1ラウンドKO。決勝戦は玖村兄弟の弟・将史を2ラウンド開始早々に倒しきった。オールKOでのトーナメント優勝は、彼がその背中を追う武尊も成し遂げていない。
トーナメントでは、ほとんどすべての選手が闘いが進む中で体力を奪われ、対戦相手だけでなくトーナメントそのものと闘うことを余儀なくされる。だがこの日の武居は違った。ベルトを巻いてから2年あまり、敗北からは4年以上遠ざかっている22歳が見せた強さは“優勝候補筆頭”の予想すらはるかに上回っていた。文字通りのワンマンショーだった。