濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武居由樹、K-1の2大エースへと飛躍!
驚異の殺傷本能を支えたものとは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2019/07/07 11:45
2015年以来負け無しの快進撃を続ける22歳の武居由樹。魔娑斗も絶賛する逸材である。
「怖い部分で攻めていこうと思っていました」
1回戦は狙い通りのボディ攻め。準決勝は「相手が得意な」バックブローでダウンを奪った。決勝は玖村将史がキックを打ち終わり、バランスを立て直そうとした隙にパンチを叩き込んだ。倒れ際には顔面への蹴りをジャストミートしている。
一瞬のチャンスを、コンマ数秒の間に2回ものにしたわけだ。武居曰く「意識して練習していたわけではないんですけど、一瞬の隙を詰めていこうと。そういう怖い部分で攻めていこうと思っていました」。
流れの中で無意識に出た攻撃ではなく、確信を持っての連打だったのだ。追撃の顔面蹴りは「相手の頭の位置を見て、咄嗟に軌道を変えました」と言う。
ADVERTISEMENT
類稀なるキラー・インスティンクト(殺傷本能)を支えたのは、周囲が「これ以上やったら壊れる」と感じたという1日4回の練習だ。武居を“悪ガキ”時代から指導してきた所属ジム「POWER OF DREAM」の古川誠一会長は、トーナメント出場選手全員を徹底的に研究し、策を与えた。武居自身も研究を重ね、古川会長の指示を完璧に理解していたという。
これだけ強くて、まだ「20点」の理由。
繰り返すが、これはベルトのかかっていないトーナメントだ。突き詰めればテーマがない。しかし武居には期するものがあった。武尊が負傷欠場中の今大会、自分がK-1を背負わなければという強い決意を抱いての参戦だったのだ。
“武尊に続く新鋭”ではなく“2大エース”に少しでも近づく。そこに、武居のテーマがあった。結果的に、このトーナメントは武居にとってエースへの通過儀礼になったと言っていい。
念願だった「メインを締める」マイクを握り、武居はリング上でこう言った。
「いま格闘技界を引っ張っている凄い人が2人いるんですけど、その2人に置いて行かれないように頑張ります」
武尊、それにもう1人が誰なのかは言うまでもないだろう。「置いて行かれないように」という言葉があまりにも控えめだというのも、やはり言うまでもないことだ。
ちなみにこのトーナメント、会長の採点は「20点」だったとのこと。「一発も食らわないで優勝する」ことが目標だったのに、相手の攻撃をもらう場面があったというのが減点材料らしい。では100点の武居はどれほど強いのか。K-1を見る楽しみがまた増えた。