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オシムがコパで驚き、賞賛した選手は?
「日本は適切な進化の過程にいる」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/07/03 17:00
コパ・アメリカの3試合にすべてフル出場したDF冨安健洋。「ボールを扱えるし空中戦も強い」とオシムも期待を寄せる。
戦い走る日本のプレーに驚いた。
――最初の2試合(チリ戦とウルグアイ戦)と比べても、そこは少し変わったかも知れません。
「だからこそ注意すべきは、選手たちを特別扱いしないことだ。そこから手のひらを返すのはさらに良くない。彼らはまだスターでも何でもない。それよりもボールをどうしたらうまく前に運べるのか。それこそが突き詰めていくべきことだ。
前線に関してはちょっと残念で、16番のような選手がトップにも必要だ。勇気があって戦いを厭わず、ゴールを切り開いていける選手だ。
昨日の試合が厳しかったのは、エクアドルがやっかいな相手だったからだ。彼らもまた日本のようにプレーしようとし、フィジカルも技術も申し分なく勇気をもって攻撃を仕掛けてきた。よく走り戦うチームで、あれだけ体格の差があると、彼らもやるべきことをすべてしていたから、プレーをコントロールするのは難しい。日本は対応に苦慮した。
日本はFIFAランキングで28位まで上昇したが、それでもこうした大会から学ぶことはまだたくさんある。これだけのパフォーマンスを見せたのはすでに大きな進歩だ。コンビネーションを発揮してゴールへの意欲を見せた。フィジカル面も素晴らしかったのが私には驚きだった。そのうえ何も恐れずに、勇気をもって戦いに挑んだ。簡単なことではない。このままずっと続けていくべきだ。ただしGKに関しては……」
――川島はもう若くはないですから……。
「誰か別の選手を探す必要がある。サイドにしてもかつての加地(亮)や駒野(友一)のように、オーバーラップを繰り返して攻撃に加われる選手がいたほうがいい。攻撃の厚みが全然違ってくる。彼らにはスピードもあり、ほぼ完ぺきであるといえた。対外的にはほとんど知られてはいなかったが、私はふたりに満足していた。
だが10番はひとりきりだ。これからどうなるのか注目しよう。すぐに劇的に変わることはできない。時間は必要だ。
しかし私は本当に驚いた。試合を見たときにこれが日本とはとても信じられなかった」
――本当ですか(笑)。
「あれだけ戦い走るのは日本のイメージではない。チームはこれからより確実なものになっていく。そうなるまでにそう時間はかからないだろう。
しかしコレクティブであるべきなのは忘れてはならない。他のどの要素よりも重要で、昨日の10番のプレーは、私にその重要性を改めて認識させた。
前にはタレントがいて後ろには16番のような能力の高い選手がいる。このまま仕事を続けるべきで、すべてに関して抜かりなく努力する。足元の技術をより確実にし、決して簡単にはボールを失わない。サッカーはその方向に進化しているからだ。どれだけ着実かつ迅速にボールをコントロールできるか。パスの精度をどれだけ高められるか。
とにかくこの大会の日本を見ることができたのは、私には大きな喜びだった」