濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
10年目の三沢光晴メモリアル大会。
22歳の清宮海斗が提示した“ノアの未来”。
posted2019/06/19 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(C)PRO-WRESTLING NOAH
6月9日、プロレスリング・ノア後楽園ホール大会の入場者数は「1710人(超満員札止め)」と発表された。ネガティブなものも含めリング(興行)外の話題が目立ちがちだったここ数年のノアだが、現在は新たな親会社のもと、体制を変えて“復興”への道を着実に進んでいる。
その立役者が、現GHCヘビー級王者の清宮海斗だ。1996年7月生まれだから、まだ22歳。「新しいファンは新しい選手が集めないと」と言うチャンピオンによって、ノアは変わった。それ以前、鈴木みのる率いる鈴木軍との抗争にも殺伐とした魅力があったのだが、清宮が持ち込んだのは圧倒的な明るさと風通しのよさだ。
「女性や子供のお客さんが増えたのを実感してます。地方でも“初めて見にきました”と声をかけてもらうことが多くなりましたね」と清宮は言う。
キャリアは約3年半とまだ浅い。それゆえに不器用で、だからこそひたむきさが光る。今の清宮は自分の若さを完璧に味方につけ、そのことが“新生ノア”の魅力につながっているのだ。若いチャンピオンに対抗することで、ベテランや中堅の実力者ぶりもさらに際立つようになったと言えるだろう。
緑のコスチュームをまとう“継承者”。
清宮は変革者であると同時に継承者だ。
憧れは少年時代に映像で触れた三沢光晴。コスチュームカラーは同じ緑で、タイガー・スープレックスをフィニッシュ技にしている。
6.9後楽園は三沢没後10年のメモリアル大会。「この大会のメインで勝った人間がノアを引っ張ることになる」という決意で闘った相手は、過去にGHC4冠(ヘビー、ジュニアヘビー両階級のシングル、タッグ)を達成している杉浦貴だった。49歳にして今また何度目かの全盛期を迎えているトップレスラーであり“三沢ノア”を知る男だ。
自分の母と同い年の杉浦を、清宮は「怪物ですよ」と言う。第32代王者の4度目の防衛戦は、挑戦者の攻撃力が目立つ展開になった。数え切れないほど放たれたエルボー連打。エプロンからリング下に叩きつける「断崖式」の俵返しも決まる。30分を超えるロングマッチの中で、清宮は杉浦の攻撃を受け、耐え、そして雄叫びとともに反撃していった。