濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
10年目の三沢光晴メモリアル大会。
22歳の清宮海斗が提示した“ノアの未来”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by(C)PRO-WRESTLING NOAH
posted2019/06/19 11:00
三沢光晴の写真が見つめる後楽園ホールで、GHCヘビー級ベルトを高々と掲げた清宮海斗。
「これがノアだっていう試合が」
タイガー・スープレックスでギリギリの勝利を収めた翌日に話を聞くと、清宮は「今回はこれまでのタイトルマッチと全然違いました」と目に力を込めた。
「三沢さんのメモリアル大会でいつも以上に集中してましたし、限界を超えることができました。GHCの闘いというのは“死闘”のさらにその先にある、誰もが想像できない領域にあるもの。そこに踏み込むことができたんじゃないかなって」
“そこまでやるか”という激しさで観客の心を揺さぶり、観客の反応がさらに選手の限界を引き上げる。そんな相乗効果で「これがノアだっていう試合ができたような気がします」と清宮。
「受けて受けて倍返し」の美学。
ただ彼自身は、ことさらに危険な技を使うわけではない。
「ドロップキックやジャーマン(スープレックス)。そういう若手の頃から使っている技を大事にしていきたいんです」
ノアのプロレス、その根本にあるのは「受け」だと清宮は語った。受身に関しては、ノアは他のどの団体にも負けていないと自負している。
「受けがあるから闘いが激しくなるし、その激しさが美しさにつながるんだと思います。長時間の試合ができるのも、しっかりした受身で衝撃を最小限に抑えているから」
過去の防衛戦でも、清宮は“受け”に回ることが多かった。何倍ものキャリアを積んでいるトップレスラーが相手なのだから、そうなって当然だ。「受けて受けて倍返し」が自分の持ち味で、それは選手生活を重ねても変わらないだろうと彼は考えている。
「プロレスの中で楽しいのは、やられてる時なんですよ。やられても、受け方次第でダメージは抑えられる。攻められるとファンのみなさんから声援がくる。それが僕の力になって反撃していく――僕が思うプロレスの醍醐味ですね」