プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
KOされたIWGP王者オカダ・カズチカ。
“ペインメーカー”が与えた屈辱の痛み。
posted2019/06/10 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
憔悴しきった表情を浮かべてIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカは棚橋弘至に抱えられて控室に消えた。
6月9日、大阪城ホールで行われたオカダとクリス・ジェリコのIWGP戦は切り返しのエビ固めでオカダがジェリコを押さえこんで2度目の防衛には成功したが、その直後にオカダはジェリコにKOされてしまった。
場外でめった打ちにあうオカダの救出に飛び込んだのが放送席に座っていた棚橋だった。
勝者のインタビュー・スペースにオカダの姿はない。現れたのは「レインメーカー・ドル札」を額に張り付けたジェリコだった。
「最後に立っていたのはオレだ。ペインメーカーは決して負けない。事実上の勝者はオレだ。ただオカダはオレが今まで戦った中でも最高のレスラーの1人だ。もちろんニュージャパンを代表するレスラーだ。それは認める。でもな、時代を越えた最高のレスラーは、このクリス・ジェリコだ」
ジェリコは得意気だった。ベルトこそ逃したが、オカダを痛めつけてペインメーカーの役目は十分に果たしたからだ。
勝った……だが全てを否定されたオカダ。
前日の記者会見でオカダはこんなことを言っていた。
「ペインメーカーが痛みの雨を降らしてくれるのかどうかはわからないですけれども、普段からプロレスをやっていれば痛いのは当たり前なので、明日はどんだけ痛いのかな、と楽しみです。IWGPらしい戦いをして、しっかりオレの方がベストだ、というところを見せつけてやろうと思います」
だが、そんなオカダのIWGPを思う誇り高き願いは、ジェリコによって強引に否定された。
ドロップキックもかわされて、ボディアタックでもヒザの反撃にあった。レインメーカーに至ってはカスることもなく封じられた。