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バスケ育成年代の指導者が考える、
10代アスリートへの理想の指導とは。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/06/10 08:00

バスケ育成年代の指導者が考える、10代アスリートへの理想の指導とは。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

バスケットボールの育成年代指導に熱を入れる萩原美樹子(左)と鈴木良和。

コーチと学生が「横」の関係性。

 日本代表のU-12、13のコーチを務める鈴木良和さんは今年38歳。強豪校である茨城・筑波西中学2年の時に先輩たちと一緒に練習をしたところ、「自分には無理だ」と選手になる夢を断ち、14歳にして「将来は指導者になる」と決意した。

 現在は「ERUTLUC」(エルトラック。ぜひ反対から英語の綴りを読んでみて欲しい)と名づけたバスケットボールの家庭教師の会社代表として、教室を運営している。

 私も練習会を見学したことがあるが、興味深かったのは開始時間に遅れてきた子供に、コーチたちが必ず握手を求めることだった。ERUTLUCは会社であり、選手たちはいわばクライアント。遅刻を責めていては元も子もないが、コーチと学生の関係が「横」の関係であることが新鮮だった。

「私の方針として、練習会ではコーチが全員の選手と話すことを目的としています。握手することを決めておけば、必ず話すきっかけになりますから」

試合をイメージした練習が出来ない。

 対話重視は萩原さんと一緒。横の関係を作り、選手の成長を促すことが日本のバスケを強くすることにつながると考える。それはヨーロッパでの体験が影響している。

「ディフェンスでのドリルを担当した時、日本の選手たちは私が言った通り、完璧にドリルをこなしました。ところが、ヨーロッパの子供たちは私が言ったことを無視して、試合に即したプレーをし始めるんです。だから、ものすごく時間がかかる」

 鈴木さんが気づいたのは、日本の選手たちは「ドリルを正確にやること」が目的になってしまっていることだった。試合をイメージしての練習が出来ていない。

「日本では先生のいうことを聞かないで、勝手なプレーをし始めたら怒られますよね。だから、言われたことをそのまま遂行する。でも、試合では想定していないことが発生するわけで、『これをしてはいけない』と思っていたら瞬時に判断できません。10代のうちから状況を見て考え、判断できる選手を育てないといけないと思って」

 鈴木さんのイメージはこうだ。指導者が100%教え込むことは不可能。だったら選手が自ら考え、逸脱することに抵抗がない環境を指導者が作る。『嫌われる勇気』では、アドラー心理学の根本原理として、「『縦の関係』を否定し、すべての対人関係を『横の関係』とすることを提唱」という部分があるが、横の関係を積極的に作っていくことが大切になる。

【次ページ】 「指導者を受容したくなる準備を」

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