「自分自身が経験することが重要」

　2017年の春。2度目のイタリア挑戦を終え帰国した際に、海外での経験を周りの選手に伝えたり、道を示したいという気持ちはあるかと尋ねたことがある。

　その時、石川は「自分の経験を共有することや理解してもらうことは大切なこと。ただ、それ以上に、やはり実際に自分自身が経験することの方が重要ですね」と話しながらも、「自分が（海外に）行ったからといって押し付けようとは思いません。何よりもそれぞれの意志が大事なので」と少し控えめに答えていた。

　もちろん、ただ海外に行くだけでは何も身に付かない……という前提で“それぞれの意志が大事”なことは確かだ。

　ただ、今回の対談で同様の質問を投げかけたとき、「海外でやるべきだと思います。世界で勝つためには」「自分が引っ張っていかなければいけない思いは以前からあったけれど、よりその思いが強くなった」とキッパリと言い切った石川の姿からは、バレー界を牽引するエースとしての覚悟を感じた。

　類稀なる才能があるのはもちろんのこと、才能に慢心することなく継続的に努力する渡邊と石川。彼らがプレーする姿や話をする姿からは、どんな状況であれ、心からその競技を楽しんでいることが伝わってくる。この対談でも彼らの競技に対する真摯な思いがひしひしと感じられた。