濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
近藤有己43歳、郷野聡寛戦で久々勝利。
直後に控室で語った「強さ」への思い。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2019/06/02 09:00
久々の勝利に、控室でスッキリしたような表情を見せた近藤。格闘技への情熱はいまだ衰えていない。
キャリアを重ねた2人の、揺るぎないスタイル。
お互いにとって特別な相手。しかしファイターとして生き残るためには感傷に浸ってなどいられない。試合の中で見られたのは“自分はこれでいく”と思い定めた選手たちの揺るぎないスタイルだ。
近藤は背すじを立てたサウスポーの構えで前進、蹴りを放っていく。郷野はステップを使いながらカウンターを狙う。たとえば「タックルのフェイントも混ぜながら」といった器用さが感じられる闘いではなかったけれど、それはそれで今の彼ららしいのかもしれなかった。
判定3-0で勝ったのは近藤だ。試合後半、圧力を強めてパンチをまとめていったのが功を奏した。郷野はどうしても後手に回る印象が残った。ただ近藤の頬が切れて出血していたところを見ると、攻防は紙一重だったとも言える。
約2年ぶりの勝利を収めた近藤について、セコンドについたロッキー川村はこう語ってくれた。
「さすが、仕上げてきてましたね。近藤さんは本当に練習熱心で、あれだけキャリアがあっても分からないことがあったら聞いてくるタイプ。特に今回は気合いが入ってました。前回の試合(昨年7月、ONE Championshipでのヘンゾ・グレイシー戦で一本負け)も、実は相当に悔しかったみたいで」
「白髪、増えましたよね」
近藤自身は、郷野との3戦目を「凄く燃えました、はい」と振り返っている。話を聞いたのは控室だ。試合直後に訪ねると、近藤が所属するパンクラスイズム横浜の代表・北岡悟が中に入れてくれた。
そういうシチュエーションだったので、短時間ながら囲み取材ではなく「単独インタビュー」になった。昔は何度もしていたが、本当に久しぶりになってしまった。ちょっと照れたのは向こうも同じだったか。「お互いですけど白髪、増えましたよね」なんていうところから話が始まった。