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チャナティップはなぜ愛されるのか。
「タイのメッシ」と日本の好相性。
posted2019/06/01 08:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
Number973号(2019年2月28日発売)の特集記事を全文掲載します!
「チャナ選手がJリーグベストイレブンに選ばれたときのチームメイトの表情見ました? みんな大喜びでしたよね。やっぱり彼は、ものすごく愛されているんですね!」
取材の一環としてタイ大使館を訪れると、一等書記官のティーラングーンさん(女性)が喜々としてしゃべり出し、スマホでお気に入りの動画を見せてくれた。
それは昨秋、神戸戦を盛り上げようと北海道のテレビ局が制作した映像。ナレーションが視聴者の戦意を煽り立てる。
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『ゴジラ、イニエスタ選手が襲来! 我らがコンサドーレの小さなスター、チャナティップ選手が出撃態勢です!』
北海道に上陸したイニエスタに、ウルトラマンとなったチャナティップが挑むという壮大なストーリー。試合は札幌が3-1で勝ち、北の大地に平和がもたらされた。
来日2年目、8ゴールを決めて札幌躍進の原動力になったチャナティップはこの冬、タイ人観光客もつめかける「さっぽろ雪まつり」の雪像になった。話題先行だった「タイのメッシ」も、いまではだれもが認める札幌のスーパースターだ。
当初は日本への適応に疑問符も。
2017年、チャナティップはタイ人J1リーガー第1号となったが、その実力には疑問符がつけられた。日本とタイのレベルの違いに加えて、文化の違いも不安視された。なにがあっても「マイペンライ(問題ない)」で笑って済ませるタイ人が、きっちりした日本に適応するのは容易ではないと思われた。
タイではいま、多くの日本人がプレーしているが、彼らが驚く伝統がある。チームによっては練習に参加しただけで小遣いが支給される。つまり練習を無断欠席する選手は少なくなく、時間にもルーズなのだ。
だがタイ・プレミアリーグを経験した元Jリーガーは、彼の成功を予感していた。