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棚橋弘至、早過ぎる復帰戦への不安。
選手生命を賭けた危険なギャンブル。
posted2019/05/28 11:45
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
新日本プロレスはジュニアヘビー級の祭典「BEST OF THE SUPER Jr.」を開催中だが、その最終戦が行われる6月5日の両国国技館で棚橋弘至の復帰戦が組まれた。相手は前IWGPヘビー級王者のジェイ・ホワイトだ。
私はG1クライマックス(7月6日、ダラスが開幕戦)での棚橋の復帰を想定していたから、1カ月も早く、予想は外れた形だ。
棚橋は4月6日のニューヨークでのザック・セイバーJr.との試合を最後に、シリーズを欠場して左ヒジの手術を受けた。悪いのは右ヒジだと思っていたから、手術が左だったのには驚いた。
右ヒザも相当悪いはずだが、手術はしなかった。ヒザの手術では、内容にもよるが復帰まで1年はかかってしまう。その期間を棚橋が1年間は長すぎると判断したからなのだろう。
ケガの度に上がるモチベーション。
「もうダメだ」とニューヨークで弱音を吐いた棚橋の言葉が耳に残っている。「ごまかしながらやって来た」のに、ついに限界を感じての戦線離脱だった。
だが、棚橋は5月4日の福岡でこんなことを言っている。
「ケガで欠場する度に、試合へのモチベーション、ベルトへの気持ちが高まって、復帰するからにはベルトを狙いに行きます」
現在のIWGPヘビー級王者はオカダ・カズチカだが、棚橋の1番目のターゲットは前王者のホワイトだ。棚橋は2月の大阪でホワイトによって1月にやっと返り咲いたばかりの王座から追われた。
棚橋はIWGPに固執する。棚橋がIWGPを狙うならG1クライマックスで優勝するか、あるいは優勝者からその権利を奪う必要がある。
ホワイトに言わせれば「棚橋のタイトル挑戦の順番は後藤(洋央紀)以下、列の後ろに並べ」と手厳しい。