酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
球史に残る「2018年の菅野智之」。
球界のエースの万全な復帰を祈る。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/05/24 11:30
NPB最高の投手である菅野智之が、再び万全な状態でマウンドに戻ってくることを誰もが願っている。
精神論に偏る度合いを減らしていきたい。
日本では高校野球の「球数制限」の問題が議論されている最中だが、日本野球はプロもアマも「精神論」に偏る度合いが大きい。
高校だけでなく、プロ野球までもが「エースの責任」、「ファンや監督の期待に応える」などの美辞麗句で「投げすぎ」が肯定されるのだ。
しかし人間である限り、どんなアスリートでも無理をすれば、そのしわ寄せは早晩、選手の肉体にふりかかってくる。
「昔はもっと投げる投手がいた」というかもしれないが、今の投手の球速、変化球の切れをみれば、昔とは別物になっていることが分かる。そして打者の体格も、昔とは比べものにならないほど大きく、屈強になっているのだ。
菅野の苦境は「昭和の野球」と「平成、令和の野球」が別物であることを身をもって示している。
NPBでずば抜けた投手だからこそ。
菅野は、現在のNPBでずば抜けた投手だ。個々の球種も、打者との駆け引きも、配球も、プロ野球のみならずすべての投手の「手本」になる。堂々としたマウンドさばきには、風格も漂う。
そんな「至宝」ともいうべき投手を、「投げすぎ」という指導者の采配ひとつで予防可能な原因で潰してしまっていいのか。
菅野は2014年10月には右ひじじん帯の部分損傷で離脱した前歴がある。くれぐれも無理をしないでほしい。「いけるか?」「いけます」みたいなやり取りで復帰させないでいただきたい。