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ホンダが目指すF1ドライバー育成。
「F3」で飛躍を誓う10代コンビ。
text by
島下泰久Yasuhisa Shimashita
photograph byHonda
posted2019/05/21 07:30
狭き門となるF1の舞台を目指し、F3に参戦中の名取鉄平(左)と角田裕毅(右)。
角田はトップ10フィニッシュ。
予選は29台中10位。タイヤのウォームアップに失敗し、我慢の予選になったと本人は悔やんでいたが、上位のほとんどを有力チームであるART、プレマのドライバーが占め、イェンツァーの3台のうち他の2台が20位以下に沈んだことを考えれば、少なくともアピールはできたと言うべきだろう。
そして土曜日に行われたレース1では、スタートで順位を落とし、後にリカバーするものの上位をうかがうには至らず、結局10位フィニッシュとなった。
「スタートでクラッチ操作をミスして出遅れたのがもったいなかったです。その後は、マシンのアンダーステアが強く、ブレーキングからコーナー進入で攻められる状況じゃなかった。接触してフロントウイングもダメージを受けてしまいましたし」
続く日曜日に行なわれたレース2は9位。「チームは対策したと言っていたんですが、乗ってみたらアンダーステアの強さは変わりませんでした」と、レース後の角田はやや憮然とした表情。マルコ博士からは「フリー走行からしっかり走っていたら、対策できたはずだ」と指摘されたという。
しかしながら、イェンツァーで唯一のトップ10フィニッシュは、まずまず評価されるものであるはずだ。
F1ドライバーに必要なもの。
角田に話を聞いていて、感じたのはその意志の強さである。自分がやるべきことは何かはっきり自覚し、自分の力も客観視できている。海外での四輪レースは初めてだが、物怖じも萎縮も微塵も感じさせずチームにもしっかり主張している姿は、まだ幼さを感じる外見とは裏腹、成熟すら感じさせる。
それは多かれ少なかれ、F1まで登りつめるドライバーには共通の雰囲気と言ってもいい。角田は速さだけでなくメンタルの面でも、そういう資質をもったドライバーかもしれないと思わせるだけのものはあった。
実際、バルセロナを訪れていたSRS-FのVice Principalである元F1、インディカードライバーの中野信治氏は「走行データも見ましたが、彼に関してはほとんど言うことはありませんね」と話していた。今後の成長には大いに期待して良さそうだ。