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田中浩康と選手が語る小宮山采配。
早大野球部としての責任と褒め方。
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byKyodo News
posted2019/05/10 10:30
威厳を保ちながら選手との距離感も縮める小宮山監督。立教大学戦以降の巻き返しなるか。
元プロとして説得力ある言葉。
監督の指導を自分の中に落とし込んだ早川は、対戦したバッターが打球を詰まらせ、首をかしげることが多くなったと実感している。一方、柴田はピッチャーの基本的な要素をメモしているという。
「就任当初に肩、ヒジの角度、体重移動の意識、足の裏のどこに重心を置くのか、などをメモしました。あくまでひとつの基礎で答えではない。そこから自分でアレンジを加え、いろんな人から意見を言ってもらい、取捨選択して自分のスタイルを作っていけと言われました」
プロ経験者としての眼力も選手を救っているのだ。
「調子が悪いときに『おかしくなっている部分はありますか?』と聞くと、自分が考えてもいない部分を指摘してくれて、視点が違うなと感じます。また、パッと聞いてもすぐに答えてくれるので、いつも見てくれているんだなと」(早川)
藤井、柴田はそれぞれ監督の言葉にある説得力をこう表現する。
「プロ、しかもメジャーでもやられた威厳、見えないものがあると思います。持っている力を出せば勝てるチームだと言われている。小宮山さんに言われると、そうなのかなと」(藤井)
「プロでもたくさんの経歴を持っている方なので技術の濃さ、重さが違う。この人に言われたら大丈夫だなという感覚になれる。信じてその方向に進める」(柴田)
田中浩康が語る「1球の大事さ」。
監督が一番、求めているのは“1球の大切さ”だ。早大野球部を知る者には言わずと知れた一球入魂の精神である。それは六大学で4連覇を果たした野村徹監督時代の東伏見の練習がキーワードだ。その当時、セカンドを守っていた田中浩康氏がコーチに加わって、守備を鍛えている。
ヤクルト、DeNAでもプレーした田中コーチは自身の大学時代を振り返りつつ、伝統の部分についてこう話す。
「野村監督は個人練習も大切にされてました。全体練習を集中して終われれば個人練習の時間も多く取れる。東伏見の安部球場のシートノックは神宮のゲームのつもりでやる、と学生の時から言われてきた。ワンプレーを大事にするということです」
1球を意識することで練習の質が上がった。それは選手の立場である藤井も感じるところだ。
「つぎの1球を何のために投げるのか。その意味を考えてピッチングをするので、練習でやることが明確になった」