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イチローが驚いた雄星の“大物ぶり”。
あの「ジャージ事件」の真相は?
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2019/04/20 17:00
練習を終え、報道陣の質問に答えるマリナーズの菊池雄星。5度の先発登板で粘りの投球を見せるも、いまだ勝ち星はなし。
革靴は超高級ブランド。
不思議なことに、ジャケットは持っていないのに、彼は靴だけは持っていた。しかも、「ベルルッティ」。超高級ブランドだ。
「メジャーの移動はドレスコードがあるじゃないですか。だから、そのために思い切ってキャンプに来る前にシアトルで買ったんです」
ベルルッティは米国でも1足2000ドル(約22万円)はくだらない。とにもかくにも、これで準備は整った。イチローさんとの約束は果たせる。黒のジャージ上下と野球帽で機内に乗り込んだ菊池は安心して爆睡した。だが、これがまた、いけなかった。
ジャージ事件の真相とは……。
日本が近づき、ジャージから正装に着替えようとして鏡を見ると、髪の毛はクチャクチャ……。
「まるでゲームで投げた後みたいな髪になっていました」とは菊池。野球帽をかぶったまま長時間寝ていれば当然か。更に追い討ちをかけたのが先のジャケットだった。
「スーツケースに突っ込んだのがいけなかった。シワだらけでこっちもグチャグチャでした」
30ドルに1度は喜んだものの、その代償は大きかった。その中で靴だけはおニューのベルルッティが燦々と輝くトリプル・アンバランス。イチローさんとの約束は守れない。断念した菊池は、ならば、せめて、と考えた。
「イチローさんに見つからないようにひっそりと飛行機から降りたつもりだったんですけど、全バレでしたね(苦笑)。どこから見てたんでしょうか。さすがイチローさんです」
イチローさんは会見で言った。
「本人には聞いていないですけど、その真相は。何があったのかはわからないですけれど、やっぱり左投手は変わったヤツが多いなと思いました。スケール感は出てましたね。頑張って欲しいです」
イチローさんの言う通り、確かに「いい子」であり「大物」と感じるが、“ジャージ事件”の真相を知れば「変わったヤツ」と言うよりは「詰めの甘さ」が残る「かわいいヤツ」。
そんな印象を受けた。