セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリア版「あの天才たちは今」。
最高峰セリエAの門はかくも狭い。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2019/04/18 11:00
26歳でセリエAにデビューした遅咲きのストライカー、ラパドゥーラ。2017年からはジェノアでプレーしている。
ユーベのセカンドチーム構想。
セリエCは、かつての金の卵たちがもがき足掻く戦場だ。
そこに、今季からユベントスのセカンドチームが初めて参戦している。
セリエAクラブのセカンドチーム構想は、若手の出場機会の増大とユース年代代表強化などを主眼として、選手協会やリーグ機構などが過去数年にわたって推進してきたものだ。
参加に手を挙げた複数候補の中から特例供託金120万ユーロなどの参加要件をクリアした「ユベントスU-23」が、栄えある第1号チームとして今季の3部カンピオナートを戦うことになった。
天下のユベントス育成部門には、イタリア全土のみならず南米やアフリカから才能が集まる。
ユベントスU-23も当然早熟のタレント揃いだが、“大人の世界”に飛び込んだ彼らは健闘どころか、ここまでリーグ戦18敗を喫し、大苦戦を強いられている。4月14日現在、セリエC・グループAでの順位は、19チーム中12位だ。首位からは勝点差30をつけられ、残る3節でユベントスU-23が2部昇格プレーオフ圏内を捉えるのは相当厳しい。
セリエCで苦戦も「我々は氷砕船」。
それでも、ヅィロネッリ監督は堂々と胸を張る。長髪と髭面の“アラフィフ”指揮官は、目先の勝ち負けではなくイタリア・サッカー史に新たな一歩を刻んだことを誇らしく思っている。
「我々は“氷砕船”ですよ。選手や監督、クラブの全員にとって初めての挑戦です。困難はわかっていました」
氷は割れた、後は我々が切り拓いた航路に続くクラブが現れてほしい、と開拓者の心意気を示す。
「こちらがU-23のチームでも相手は当然手加減などしてくれないですし、彼らはむしろユーベの名を背負う我々を目の敵にしてくる(苦笑)。ただ、我々が得た勝点は前半戦と後半戦でほぼ同じでも、シーズンを通してプロの選手と戦ってきたことで選手たちの眼の色が変わりました。モデルケースとしたいのは、'10年南アフリカW杯を制したスペイン代表です。彼らの選手たちがBチームで重ねた累計出場数は実に900試合もあったのです」
今どきの若者たちのスマホ依存を嘆きながら、ヅィロネッリ監督は「現実と向き合え、プロの実戦で揉まれろ」と尻を叩くのだ。