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「明徳イズム」を引き継ぐ公立校。
勝因は“メイショウ”の分析にあり! 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byKyodo News

posted2019/03/28 17:30

「明徳イズム」を引き継ぐ公立校。勝因は“メイショウ”の分析にあり!<Number Web> photograph by Kyodo News

明石商業のエース中森が141球の力投。狭間監督の信頼も厚い。

相手を丸裸にする分析力。

 その日の発言から一つ、抜き出そう。兵庫県大会4季連続優勝中という事実を踏まえ「これからはいよいよ全国の舞台。手ごたえがあるのではないですか」と尋ねた筆者に対し、狭間はこう答えた。

「いや、そんなん思ったことないな。ポジティブに考えんタイプ。全部ネガティブやから。おれがいちばん嫌なのは、サイレン。いつも試合のサイレンが鳴るまでぐじぐじ言うてる。ああでもない、こうでもないって。(対戦相手の)ビデオを毎回見て、全部終わってからまた見たら、気づくことあるやろ。

 選手に『おい、ちょっと来い』って。『やっぱりこう(しぐさ)やったら牽制入れてるわ』とか、『見てみ、こうや』とか言うてな。家でも部屋でずっとビデオ見て、そのまま寝てもうても、頭の中でビデオが流れてる。そのまま起きてまた見るような。寝ない日が何日あったか」

 目下、県内27連勝中。'07年の監督就任からの戦績は、狭間によれば「168勝40敗やったかな」。本人いわく「負けにくく、勝ちやすいチーム」をつくってきた。

 その要因の一つは、先ほどの言葉にあるように、対戦相手の映像をとことん見て“丸裸”にする分析の努力である。

対国士舘エースに講じた対策。

 今年のセンバツでも初戦の相手、国士舘(東京)の研究に抜かりはなかった。試合前の取材、抑制しつつも狭間の舌は滑らかだった。

「(国士舘の白須仁久投手対策は)フライを上げないということでしょうかね。都大会も、神宮大会でも、(打者は)高めに浮いた球をいい当たりするんですけど、ちょっとタイミングが。ストレートと変化球で緩急をつけていくので。『ストレート来た』思ったら、ちょっとボールが高い。それがみんなフライになってる部分がある。特に右バッターですね。

 たしか菅生(都大会決勝で国士舘に敗れた東海大菅生)も、13アウトのうち8つぐらいフライで。フライの数にはちょっと気をつけていきたいなと思いますけど」

 さらに「どのカウントでどの球をよく投げてるとか、勝負球がどれなのかっていうのはわかっているので、それに対応できるような形をとっている」とも語り、対戦が決定した3月15日からずっと研究と実践を繰り返してきたことを明かした。

【次ページ】 「2ストライク後の打ち方」

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