Jをめぐる冒険BACK NUMBER

ザックとハリルの真似だけじゃなく。
レノファ霜田監督を支える発想力。

posted2019/03/27 17:05

 
ザックとハリルの真似だけじゃなく。レノファ霜田監督を支える発想力。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

2019年の開幕5試合は1勝4敗とやや出遅れたが、霜田監督とレノファには目指す哲学がある。

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

PROFILE

photograph by

J.LEAGUE

開幕1カ月が経った2019年のJリーグ。各クラブがチーム構築を進めつつ戦うこのタイミングで、今回は日本サッカー協会技術委員長などを経て、現在J2レノファ山口の指揮を執る霜田正浩監督の白熱したインタビュー取材の記事を2回に分けてお送りする。この後編では、山口の地で築こうとしている独自のスタイルを明かしてくれた。

――昨シーズンは夏から秋にかけて14試合未勝利という苦しい時期がありました。その要因については、どう分析していますか?

「理由はひとつじゃなくて。攻撃の2枚看板のひとりだった(小野瀬)康介が移籍したのもひとつだし、もうひとりの池上(丈二)も負傷して3カ月出られなくなったのもひとつ。

 あと、対策されるだろうなとか、夏場は持たないだろうなとか、想定していたけれど、夏だから省エネサッカーをするつもりはなかった。それで負けるなら仕方がないとは思わないけど、それでも勝つ方法を選手たちに考えて、体現してほしかった。夏だから90分プレスはもたない。でも、90分プレスをする必要はない。自分たちがボールを持つ時間を長くすればいいとかね。

 目先の修正で乗り切るのではなく、夏だけど行け、その中で調節しなさい、という話をしたけど、まだそこまでのレベルではなかったですね」

――春の時点で「このサッカーを続けていたら、夏場は厳しい。そのことはすでに考えている」とおっしゃっていました。

「練習の時間を変えたり、セッションの長さを少し短くしたり。そういうことはやったんだけど、根本の部分は変えたくなかった。ただ、14試合も勝てないとは思わなかったけど、7分7敗で引き分けが多かったし、内容も悪くなかったから」

――前半戦ではうまく転がっていたことが、後半戦では悪いほうに転がった印象です。

「内容は悪くないのにアディショナルタイムにやられたり、PKを獲られたり。だから、強がりじゃないけど、全然悪くないと思っていたんです。本当はそれが一番ダメなんだけど(笑)

 でも、何も変える必要はないと思っていたのは事実。だって、14試合も勝ててないのに、練習の雰囲気は良いし、誰も手を抜かない。チームにとってマイナスになる選手はひとりもいなかった。だから僕も、何も変える必要ないなって。あとは運がこっちに向くかどうか。やることをやっていれば、どこかで必ず運が向いてくるから、そのどこかはいつかな、って楽しみにしていたところもあります(笑)」

――そんなに余裕があったんですか?

「余裕はないよ、もちろん。勝てないんだから。しんどかったよ。だけど、練習をしたら、そのしんどさが薄れるんです。だから、一番しんどいのは朝。でも、トレーニングでは選手たちが100%でやってくれる。暗くなるのが一番ダメだと思うけど、選手たちの表情は明るいし、雰囲気もいい。『これは絶対に次は勝てるぞ』って思うわけ。

 それでも、勝てない。引き分ける。その繰り返しだったから、メンタルは大変だけど、これは『自分を信じるか、信じないか』の試練だなって」

【次ページ】 支えとなった社長、GM、コーチ陣。

1 2 3 4 NEXT
#霜田正浩
#レノファ山口

Jリーグの前後の記事

ページトップ