Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ザックとハリルの真似だけじゃなく。
レノファ霜田監督を支える発想力。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/27 17:05
2019年の開幕5試合は1勝4敗とやや出遅れたが、霜田監督とレノファには目指す哲学がある。
映像を見せて口説いたドストン。
――では、2年目となる今シーズンは、どこに目標を置き、どんな青写真を描いていますか?
「選手たちが頑張ってくれたおかげで、レノファ山口というチームのブランディングが進んで、興味を持った選手が来てくれるようになった。限られた予算の中で、獲りたい選手が来てくれて、残ってほしい選手が残ってくれた。編成はうまくいったので、今度はそれをどう結果に結び付けるか。
去年はすごく極端なことを言って、発信することで勝利をもぎ取って16勝したけれど、今年はそこにプラスして、もっとしたたかに勝てるようになれれば、と思っています」
――補強に関して言えば、ウズベキスタン代表DFのドストン選手を獲得しました。彼は国内の名門からも声が掛かっていたのに、J2のレノファを選んでくれた。どうプレゼンし、どう口説いたんですか?
「もともとドストンは、国外に出たいという希望を持っていたんです。昨年1月のU-23アジア選手権で優勝したU-23ウズベキスタン代表のキャプテンだった彼のもとには国内のビッグクラブだけじゃなく、韓国からもオファーが届いていて。でも、彼は『日本でやりたい』という希望があったから、日本人の友人に相談をしたら、その人がうちに声を掛けてくれた。
それで、プレー映像を見てみたら、素晴らしかった。しかも23歳で、これからの選手。だから日本に来てもらって、うちのプレーモデルの映像を全部見せて、『去年はこうやって守って、こうやって攻めて、ほら、こうやってやられちゃってるんだよ』って説明したの。そうしたら、彼が『(エクトル・)クーペルのやり方と似ている』って」
――へえ、ウズベキスタン代表と似ていると。
「そう。『クーペルに言われていることと近い』って。僕は日本の2部リーグでプレーしたら、代表のキャリアにマイナスになるんじゃないかと思ったんだけど、彼は『全然問題ない』と。『新しい国で、新しいチャレンジがしたい。しかも、クーペルが求めるものとも近いから』と言って、俄然やる気になってくれた。それは予想外でラッキーでした(笑)」
――外国籍選手のストライカーを獲得するという考えは、なかったんですか?
「獲れれば獲るんだけれど、強化をやってきた経験上、ストライカーは実力とお金が見合ってるの。やっぱりストライカーは、点を取ることで自分の価値を高めてきたわけだから、点が取れるストライカーはお金がかかるし、それなりの金額のストライカーはゴールもさほど奪えない。19歳、20歳で、うちで伸びていく成長枠とかならいいんだけど、そうじゃないなら、日本人FWのほうがいい。
工藤(壮人)も、高井(和馬)も、山下(敬大)も、(田中)パウロ(淳一)も、(高木)大輔も、岸田(和人)もいるんだから。ひとりで30点取れる選手はいないけど、『3トップで合わせて30点は取れ』と言ってます」