反骨心こそ、投げる原動力。

　身長169センチ。プロ野球選手としては、かなり低い部類に入る。165センチだった高校当時から、藤代の2年生エースとして甲子園で好投しても「背が小さい」と周りから言われ続け、それは中央大学、東京ガスに進んでも同じだった。結果を出したところで、「でも」という接続詞がついて回った。

　反骨心。美馬は投げ続ける原動力を、そう表現していたことがある。

「プロでここまで……まだまだなんですけど、できているのは、そこが一番かもしれない。野球をする以上、身長は関係ないと思っていますけど、僕の場合、結果が出せなかったら絶対に身長のことを言われるから。それが本当に嫌だし、『いい結果を残して見返してやりたい』って気持ちはありますよね」

　身長が低い。いくら実績を残し、周りが認めたとしても、小柄な選手からすればその事実からは逃れられない。5年連続で盗塁王を獲得した170センチの元阪神・赤星憲広や、現役最多の163勝を記録する167センチのヤクルト・石川雅規も、「大きい選手には負けたくない」と述べていたものである。

強気のピッチング。

　美馬という投手は、マウンドに上がれば「熱くなる」と自認するほど強気だ。ピンチを迎えようがカウントが悪かろうが、シュートで右打者の内角をえぐる度胸がある。その反面、ひとたびマウンドを降りれば控え目で、「自分には岸（孝之）さんやノリ（則本昂大）のような実績がないんで」と、どこまでも謙虚に振舞う。

　実績がないと言うが、美馬にはそれがある。楽天が初の日本一となった日本シリーズでMVP。'17年には11勝を挙げ、西武とのクライマックスシリーズでは、負ければ敗退という剣ヶ峰で役割を果たした。大一番での勝負強さは、則本も「本当に大事な試合に強い」と舌を巻くほどだ。

　何より、美馬は幾多の手術を乗り越え、その度にローテーション投手として蘇るという、不屈を物語る「実績」がある。

【次ページ】　「彼の活力になれば嬉しい」