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勝った田中恒成と、敗れた田口良一。
両者はこの激戦で何を手にしたのか。

posted2019/03/18 17:00

 
勝った田中恒成と、敗れた田口良一。両者はこの激戦で何を手にしたのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

互いの力を出し切った田中恒成(手前)と田口良一、彼らがこの試合から持ち帰った感覚は想像すらつかない。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 因縁対決はチャンピオンの大差判定勝ち─―。

 岐阜メモリアルセンター愛ドームで行われたWBO世界フライ級タイトルマッチは、3階級制覇チャンピオンの田中恒成(畑中)が挑戦者で元WBA・IBF世界ライトフライ級統一王者の田口良一(ワタナベ)を下し、初防衛に成功した。「THE FATE(運命)」と銘打たれた一戦。勝者は、敗者は、何を手にしたのか――。

 予想通りに田中は速く、強く、田口はタフで、粘り強かった。互いに持ち味を出した一戦となった。

 昨年5月、ヘッキー・ブドラー(南アフリカ)に「不完全燃焼」で敗れ、世界王座から陥落した田口は、その反省を生かしてスタートから攻めた。

 ジャブがよく、近距離で右アッパーをよく使い、ほぼ互角という滑り出し。フライ級にあげて減量苦から解放され、動きそのものも冴える。心配されたスピードの差もそれほど感じさせなかった。

田口のたった一度の大きなチャンス。

 しかし、「田口がいいな」と思わせた時間は長く続かない。田中は田口の攻撃をいなしながら、左フック、アッパー、ボディブローをテンポよく叩き込んでいく。フットワークがより滑らかで、なおかつパワーで挑戦者を大きく上回った。

 3回、田口の右フックをテンプルにもらって田中のヒザがカクンと落ちた。「一瞬ダメージがあった」と王者は認めたが、結果的に本当に危ないシーンはここだけだった。

 田中は冷静に立て直すと、再び強烈な左ボディで田口に迫る。下がることのめったにない田口が下がり始めた。この時点で勝負の行方がだいぶ見えたように思えた。

 田口は後半に強いタイプで、外国人選手が相手なら、コツコツと当て続けて終盤に失速を誘い、逆転というパターンもあり得ただろう。ただし、スタミナ十分で精神的にも強い田中が相手では、そうした希望も大きくは持てなかったのである。

 それでも田口は奮闘した。ダメージでいうことを聞かない身体を強靭な意思で前に押し出した。それに応えるように、田中も多少の被弾は気にせず、アグレッシブに手を出し、5500人で埋まったで愛ドームを盛り上げ続ける。

 顔を腫らした田中。最終ラウンドはフルスイングで目もうつろな田口に迫り、ノックアウトを狙った。最終スコアは117-111が2人、残りが119-109。大差はつきながら、両者が試合前に口をそろえた「面白い試合になる」との公約は実現したと感じさせる幕切れだった。

【次ページ】 全国区の知名度を得た田中恒成。

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