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勝った田中恒成と、敗れた田口良一。
両者はこの激戦で何を手にしたのか。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKyodo News

posted2019/03/18 17:00

勝った田中恒成と、敗れた田口良一。両者はこの激戦で何を手にしたのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

互いの力を出し切った田中恒成(手前)と田口良一、彼らがこの試合から持ち帰った感覚は想像すらつかない。

田口が感じた井上尚弥戦以来のダメージ。

 一方、32歳の田口は田中の引き立て役に甘んじる形となったが、かといって、ただみじめに踏み台になったわけではない。

「(フライ級に上げて)動きは前回よりもよかった。前回は終わったときに引退と感じたけど、いまはそういう感じじゃない。せっかく梅津さん(宏治トレーナー)に変わって、成長を感じた。このままじゃもったいないという気持ちはある。引退? それもあるにはある。どうしたらいいか分からないのが正直なところ」

 敗れたとはいえ相手は田中だ。フライ級転向第1戦、トレーナーも代えて心機一転という試合でこれだけのパフォーマンスができたのだから、もう少し続けてみたいという思いは理解できる。逆に言えば、だからこその引退もあり得るだろう。「ラストファイトにふさわしかった」と決断したとしても、不思議ではない試合だったのだ。

 田口は試合後、頭痛と気分の悪さに襲われ、メディアに対応するまでしばらく時間をとった。タフでならす田口が試合後、激しい頭痛に襲われたのは2013年、井上との日本タイトルマッチ以来だという。

 田口はこの敗戦からしばらくして世界王者となり、井上のその後の活躍は周知の事実だ。勝った者も、負けた者も、互いに手にするものがある。それを好勝負と呼ぶのだろう。

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