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イチロー262安打時の監督が宣言。
「感情は切り離して勝ちにいく」
posted2019/03/18 07:00
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph by
Naoya Sanuki/Yukihito Taguchi
262安打をマリナーズ監督として見届け
現在はアスレチックスを率いているボブ・メルビン監督。
東京ドーム開幕戦に熱い視線を注ぐ。
Number974号(2019年3月14日発売)の特集を全文掲載します!
現在はアスレチックスを率いているボブ・メルビン監督。
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ボールがショートのグローブを抜けて、センターにたどり着いたとき、歴史が動いた。
シーズン258本目のヒットが誕生したのだ。ベンチから真っ先に飛び出して塁上のイチローのもとに駆け寄ったのが、ボブ・メルビンだった。
メルビンは2004年にイチローがジョージ・シスラーの記録を84年ぶりに塗り替えたときのシアトル・マリナーズの監督であり、'11年からはアメリカン・リーグ西地区のライバルであるオークランド・アスレチックスで指揮を執っている。
あのときベンチから真っ先に飛び出したメルビンの行動に、彼のリーダーシップや思いやりが表れている。イチローが今でも尊敬する監督に挙げるが、それも納得だ。
オフを与えたのは「判断ミス」。
メルビンにとっても、イチローの記録更新は監督人生の中で最も嬉しかった瞬間の一つだという。'04年の記憶を思い起こしながら、実はもう一つ記憶に残る光景があると打ち明けた。
「同じ年にシカゴへの遠征中、イチローにオフを与えたことがあります。もちろん、良い意味で、ベンチで体を休めてほしかったんですが、大きな判断ミスだったと後で気が付きましたよ」
メルビンは笑いながら言った。
「その試合中、イチローはずっとスパイクを履いてユニフォーム姿でベンチに座り、『いつでも行けるよ』という雰囲気を発していました。そこで、イチローにとってはオフよりも試合を休んでいる方が負担になるんだと理解して、それからはもう絶対に彼を休ませないと誓ったんです」