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酒井高徳と宮市亮が“地獄”で対決。
昇格を争うハンブルクダービー。
posted2019/03/16 08:00
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph by
Uniphoto Press
大通りに面した1階のマクドナルドの上に、性産業店が堂々と3フロア分も乗っている。というよりも性風俗ビルの1階をマクドナルドが間借りしている、と言った方が正しい。
そんな風景も当たり前の“悪名高き”レーパーバーン(ドイツ・ハンブルク、ザンクトパウリ地区にある歓楽街)も昼間はさすがに大人しい。3月最初の週末は、タクシーにつかみかかろうとする酔っ払いが1人いるだけだった。
その翌週日曜日、正午前から町は決戦の準備が整っていた。史上初めて2部で争われるハンブルクダービーの第2ラウンドである。
ダービーを盛り上げるスパイス。
ブンデスリーガの創設メンバーであり、昨季まで1部から降格したことがなかった名門ハンブルガーSVと、歴史のほとんどを2部以下で過ごしてきたザンクトパウリ。ダービーを盛り上げるに十分なスパイスとなる「格差」が、両者の間にはある。
ザンクトパウリの象徴である髑髏の絵柄を身にまとったファンが、スタジアムの周辺を埋めている。片手にはビールが入った缶や瓶を握りしめて、居並ぶ警官隊の前を行く。「ハンブルクダービーは無事に開催されるのか、みたいな話が新聞に載っていましたね」。前日に会ったドイツ在住の日本人の話が思い出された。
ホームでのダービーが行われる前、ザンクトパウリは2位につけるハンブルガーSVを勝ち点4差で追っていた。一時期は自動昇格圏内の2位以内を争っていた両者だが、残り10試合となり、より1勝の重みが増すなかで迎えた因縁の一戦だった。
キックオフ前から、ミラントア・スタジアムには熱気が圧縮されていた。南ゴール裏は熱狂的ウルトラスに占められるが、スタジアムには夫婦とおぼしき男女など中高年の姿も多い。試合前からゴール裏のコールにバックスタンドが大声で応える。
「地獄へようこそ」
スタジアムの電光掲示板には、そう記されていた。