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ミルコ・クロコップが完全引退。
超ストイックな闘争本能の記憶。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKyodo News
posted2019/03/13 16:30
2003年3月、K-1の舞台でボブ・サップと戦った時のミルコ・クロコップ。サップは右眼窩内を骨折することとなった。
どこまでもストイックだったミルコ。
冒頭の会見のやりとりを例に出すまでもなく、ミルコはとっつきにくい一面もあったが、その一方で自分には厳しく日常の食生活の管理は徹底していたので、その類のエピソードを聞いた時には感心した。
水分の補給はミネラルウォーターとオレンジジュースが基本。コーヒーや紅茶などカフェインが入った飲み物を口にすることはなかった。アルコールを口にするのは、パーティーに出席して乾杯する時だけ少々嘗める程度にとどめていた。
日本に頻繁に来訪するようになった外国人ファイターはピーター・アーツのように霜降りの牛肉などを好んで食べるタイプも多いが、ミルコは例外だった。
主食は脂の部分を全て削ぎ落とした赤身のステーキで、焼き方はエキストラ・ウェルダンと決まっていたからだ。要するにパサパサになるまで焼かなければ、ミルコは口にすることはなかった。
あとはスパゲティ・ボロネーゼさえあれば、毎日同じメニューでも文句をいうことはなかったという。
意外なことに野菜は苦手で、添え物のポテト以外積極的にとろうとはしなかった。野菜不足はサプリメントで補っていたというのか。
ミルコの野菜嫌いは幼年期のトラウマでは。
ミルコがまだ12~13歳の時代のこと。筆者はたまたま当時のクロアチア(当時はユーゴスラビア)を旅することがあったのだが、野菜サラダの類を口にする機会は非常に稀だったと記憶している。たまさか、そういう類の野菜料理があったとしても、どれも傷んでおり、とても口にできるような代物ではなかった。
わずか1週間程度しか現地に滞在していない旅人の経験が全てというわけではないことはわかっている。
ただ、少年時代のミルコと、当時の筆者が同じようなものを口にしていたことは確かだろう。当時のユーゴの生野菜事情と彼の野菜嫌いは関係しているかもしれない。