ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
現場には血が通っていた。~トヨタ創業者の孫を「運転のことも分からない人に」と一喝したテストドライバー~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byWataru Sato
posted2016/04/02 08:00
『豊田章男が愛したテストドライバー』稲泉連著 小学館 1600円+税
経営とスポーツの間には、どんな関係があるのだろうか? さらに深く掘り下げるならば、ビジネスと経験的実感の相関関係とは? それを示唆するノンフィクションがこの1冊である。
本書はトヨタ自動車という企業のサイドストーリーであり、またレースに魅せられた男たちの友情秘話でもある。主人公は、現社長の豊田章男と社内の車両実験課に所属するテストドライバー成瀬弘(ひろむ)。臨時工として19歳からトヨタで働き始めた成瀬は、13歳年下の豊田に初めて会った時、ぴしゃりこういったという。
「運転のことも分からない人に、クルマのことをああだこうだと言われたくない」