ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
走ることから、日本を知る。~駅伝、という世界的にも極めて珍しい光景~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byWataru Sato
posted2016/01/17 06:00
『駅伝マン 日本を走ったイギリス人』アダーナン・フィン著 濱野大道訳 早川書房 1700円+税
年末年始、テレビをつければタスキをつなぐランナーたちの姿をみることができる。懸命に走る彼らの姿を僕らは何の疑いもなしに眺めている。時に、ランナーたちの表情や驚くべき走力に心動かされながら。けれど、全世界的に鑑みれば、その光景がずいぶん稀有なものだと、この本の読後には気づくはずだ。
『駅伝マン』の著者、アダーナン・フィンは英国のジャーナリスト。前作『ケニア人と走る(Running with the Kenyans 未訳)』では、ケニアに滞在し、その地のランナーと一緒に走りながら世界の長距離走シーンをリードする国や人々を描いた。そんな彼が、次なるテーマに選んだのが日本の長距離走者。身体的優位性もないのに、なぜ優秀なランナーを多数輩出する土壌があるのか探るため、家族で京都に引っ越してきたのだ。