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「人間はすごい」と再実感、“白い地獄”からの脱出行。~手足の指すべてを失う、命を賭したアンナプルナからの下山~ 

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馬立勝

馬立勝Masaru Madate

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posted2016/04/26 08:00

「人間はすごい」と再実感、“白い地獄”からの脱出行。~手足の指すべてを失う、命を賭したアンナプルナからの下山~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『処女峰アンナプルナ 最初の8000m峰登頂』モーリス・エルゾーグ著 近藤等訳 ヤマケイ文庫 1000円+税

 世界登山文学の古典。1950年6月5日、人類初の8000m峰登頂を果たしたフランス隊のモーリス・エルゾーグ隊長(当時31)の口述記である。ヒマラヤ委員会は遠征隊に伝える。目指すはダウラギリ(標高世界第7位)かアンナプルナ(第10位)、最終目標は現地で決めること。当時8000m峰登攀は数年がかりの壮図だ。偵察だけでもいいというニュアンス、“ミッション・インポッシブル”だった。


 遠征隊は4月にネパールに入った。不正確な地図に悩まされ2カ月近い偵察を続け、ダウラギリは断念した。アンナプルナを“見つけ”登攀開始は5月下旬、モンスーンが近づいていた。少しずつ高度を稼ぐテント設営までは順調だった。7500mの第5キャンプからエルゾーグとラシュナルがアタックを開始した。厳寒で足の感覚を失ったラシュナルが訊ねる。

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