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アメリカ文学の真骨頂、自然対人間の至高の一冊。~『熊 他三篇』を読む~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2015/09/01 09:00
『熊 他三篇』ウィリアム・フォークナー著 加島祥造訳 岩波文庫(現在絶版)
アメリカ南部、ミシシッピィ河デルタ地帯に広がる大森林に罠傷や撃ち込まれた弾丸で満身創痍の巨大な熊がいた。賢く神出鬼没で狩人たちは「オールド・ベン」と仇名した。何頭もの猟犬が大熊に殺された。男たちは毎年11月に森に入り、狩猟小屋に泊まって狩りをした。狙いはオールド・ベンだが、「古来の大自然の命の亡霊」に会う“儀式”になっていた。少年は10歳で初めて狩猟行に加わった。森の掟を教える師匠はインディアン酋長の血を引く老黒人サム。仲間は、無謀な勇敢さを持つブーン、インディアンの血が混ざった白人の大男だ。青黒い毛に黄色の眼を持ち、地主の仔馬を殺すがサムに捕まり猟犬に仕立てられ、「ライオン」と名付けられた猛犬。彼らは、少年が16歳になった冬にオールド・ベンを倒すことになる。