Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

<弟弟子が見た“長兄”>
高安「恩返しは優勝報告で」

posted2019/02/19 15:00

 
<弟弟子が見た“長兄”>高安「恩返しは優勝報告で」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

PROFILE

photograph by

Atsushi Hashimoto

 15歳で入門してから13年間――。
 雲の上の存在だった兄弟子の背中を追い、その土俵人生を間近で見続けてきた。
 弟弟子が、偉大なる“兄”の素顔を語る。

「土俵人生において、一片の悔いもございません」

 引退会見で真っ直ぐ前を見据え、大粒の涙を流しながらの、稀勢の里の言葉だ。それは、人気漫画『北斗の拳』の主人公・ケンシロウの兄、孤独に生きるラオウの名台詞を意識したものだった。まさにラオウの如く孤高に戦い続けた兄弟子の姿を、傍らで仰ぎ見ていた高安はいう。

「あの涙、かっこいいじゃないですか。それだけ真剣に全力で走り続けてきたということ。そうじゃないと泣けないですよ」

 思えば2人は同じ茨城県出身で、同じ野球少年だった。両親の奨めもあり、兄弟子と同じく15歳で入門。当時の稀勢の里は、18歳にしてすでに幕内力士だった。

「新弟子にとって雲の上の人でしたし、当時の僕は叱られてばかりでしたから。5回も部屋から逃げ出すようなお相撲さんだったんです。地に、土俵に足がちゃんとついていなかった。だから当時はなかなか指導してもらう機会もなかったんです」

 この世界で生きると心を決め、三段目まで番付を上げた頃。兄弟子は、稽古で胸を出してくれ、食事にも連れ出してくれるようになった。三段目昇進時には雪駄を、幕下昇進時には博多帯をお祝いとして贈られ、高安は、今も宝物のように大事に扱っているのだという。

「食事の面でいえば、いろいろなところに誘って下さりお腹いっぱいに食べさせていただいたものです。焼き肉や中華料理、どこに行くにも声を掛けてくれ、『食べろ、食べろ!』って」

 それは今、185cm178kgの己の体の血となり肉となり、骨となっている。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
ウェブ有料会員になると続きをお読みいただけます。

高安
稀勢の里

相撲の前後のコラム

ページトップ