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藤田菜七子が語っていたGIの願望。
「いつか乗せていただけるように」

posted2019/02/04 10:30

 
藤田菜七子が語っていたGIの願望。「いつか乗せていただけるように」<Number Web> photograph by Shin Suzuki

2018年は28勝を挙げるなど、着実に歩んでいる藤田奈七子。フェブラリーSで初のGI騎乗を果たす。

text by

井上オークス

井上オークスOaks Inoue

PROFILE

photograph by

Shin Suzuki

デビューからわずか2年半でGI騎乗の権利を獲得し、
女性騎手最多勝記録も更新。勝負師としての成長を支えるのは
経験の中で得た“引き出し”と謙虚な姿勢だった――。
2月17日のフェブラリーステークス(GI)で、
JRA初の女性騎手によるGI騎乗を予定している藤田菜七子。
Number964号(2018年10月25日発売)の記事を
特別にNumberWebで全文掲載します。

 藤田菜七子がデビューした2016年、日本の競馬界は“菜七子フィーバー”に沸いた。初勝利を挙げる前から、あれほど注目を集めた新人騎手は他にいない。一時の過熱ぶりは落ち着いたとはいえ、現在も強烈なスポットライトを浴びている。

 31勝クリアで、GI騎乗の権利獲得!

 JRA女性騎手最多の35勝達成!

 着実に勝利を挙げているからこそ、話題になり続けているのだ。だが“16年ぶりに誕生したJRAの女性騎手”という代名詞は、デビュー以来ずっと彼女に重くのしかかっているのではないか。そんな懸念を抱きながら、筆者は彼女の動向を見ていた。しかし――。

 あるレースを見て、妙な老婆心は吹き飛んだ。師匠の根本康広調教師は言う。

「あんなレースはありえない。いくら相性のいい馬でも、伸びすぎですよ」

 9月27日、浦和競馬場の第7レース。水の浮く不良馬場で行われた、ダートの1500m戦。イーストスパークルという7歳馬の手綱を託された藤田はレース前、こう考えていた。

「馬場状態の影響か、その日は前に行った馬が残っている印象だったので、『前目で競馬をしたい』と思っていました。だけどゲートが開いたらあまり出ていかず、後ろの位置取りになってしまって。そうしたら他の馬たちが飛ばして行ってくれたので、『このペースなら、この位置でもいいな』と作戦を切り替えました」

最後方でも「届くな、と」。

 イーストスパークルに騎乗するのは3回目。過去2戦の結果は2着、3着で、いずれも直線で脚を伸ばしている。とはいえ、浦和競馬場は1周1200m、直線距離は220mの小回りコースなので、基本的に先行有利な競馬場だ。

 たとえば、東京競馬場の芝コースは1周約2100m、直線は525.9m。東京では追い込みもバンバン決まるが、非常にコンパクトな浦和コースで直線一気を決めるのは至難の業だ。それでも藤田は慌てず騒がず、11頭中11番手、最後方でレースを進めた。

「最後は絶対に脚を使ってくれる馬なので、信じて乗っていました。浦和の直線は短いんですけど、『届くな』と」

 直線で大外に持ち出して、前を行く10頭をゴボウ抜き。イーストスパークルは、先頭でゴールを駆け抜けた。臨機応変な対応、騎乗馬の余力を察する力。いずれも経験が身になっている証だろう。

【次ページ】 藤田が乗ると不思議と伸びる。

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