Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

藤田菜七子が語っていたGIの願望。
「いつか乗せていただけるように」 

text by

井上オークス

井上オークスOaks Inoue

PROFILE

photograph byShin Suzuki

posted2019/02/04 10:30

藤田菜七子が語っていたGIの願望。「いつか乗せていただけるように」<Number Web> photograph by Shin Suzuki

2018年は28勝を挙げるなど、着実に歩んでいる藤田奈七子。フェブラリーSで初のGI騎乗を果たす。

海外の女性騎手から学ぶこと。

 藤田は海外で騎乗する機会にも恵まれている。これまでにイギリス、UAEのアブダビ、スウェーデン、マカオに渡り、騎手招待レースに参加した。アブダビでは、アメリカで3704勝を挙げた伝説の女性騎手、ジュリー・クローンから、木馬を使ったトレーニングの指導を受けた。

 また、海外の女性騎手の体格のよさやレース中の絶え間ない雄叫びに驚きを覚えたという。

「とても刺激を受けました。兄弟子の(野中)悠太郎先輩はアイルランドで、同期の坂井(瑠星)騎手もオーストラリアで長いこと騎乗しています。言葉も通じない場所にひとりで乗りにいくのは大変なことだと思いますし、本当に尊敬します。『いつかは自分も』という気持ちがあります」

 憧れの海外のジョッキーは、リサ・オールプレス。2児の出産を経てリーディングジョッキーに輝いた、ニュージーランドの名手だ。リサ騎手がJRAの短期免許を取得して来日した際に色々な話をして、パワフルな騎乗や、常に上を目指す姿勢に憧れを抱いた。

「リサジョッキーは『もう少し、馬を抑えるパワーがあったほうがいいよ』とアドバイスしてくださいました」

小平奈緒を参考にして。

 昨年からはトレーナーを付けて、体幹などのフィジカル面を鍛えている。なかでも興味深いのは、一本しか歯のない下駄を履いて行うトレーニングだ。

「スピードスケートの小平奈緒選手が、一本下駄を使ってトレーニングしていることを知ったのがきっかけです。すでに同じようなトレーニングをされているジョッキーもいたので、『どうなんですか?』と訊ねたら、『けっこういいよ』と。それで、私からトレーナーの方に提案して始めました」

 立っているだけでもよろけてしまうような一本下駄で騎乗姿勢を取り、さらには両腕で重りを上げ下げする。たしかに体幹は鍛えられそうだが、かなり辛そうだ。

「でも、馬に乗っているときの感覚に近いものがあります。馬の上も同じくらい不安定ですし、騎手は細いアブミ(足を踏みかける馬具)に乗っているので」

【次ページ】 目標はいつでも「次の1勝」。

BACK 1 2 3 4 NEXT
#藤田菜七子

競馬の前後の記事

ページトップ