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イチローが迎えるメジャー19年目。
初のマイナー契約も泰然と構える。
posted2019/01/26 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
1月24日(日本時間25日)、シアトル・マリナーズはイチローとの選手契約を正式に発表した。
2月16日(同17日)からアリゾナ州・ピオリアで始まるメジャー・キャンプには招待選手として参加。メジャー19年目にして初のマイナー契約からのスタートとなる。
とは言うものの、ジェリー・ディポトGMはかねてから3月20日、21日に東京で行われるアスレチックスとの開幕戦前に「メジャーリーグ契約へと切り替える」と公言している。
用意されているのはいわゆるスプリット契約。その際の年俸は75万ドル(約8250万円)。オプションも設定され最大では200万ドル(約2億2000万円)ほどに達するとされている。
この契約額は6年ぶりに古巣マリナーズに復帰した昨季と同じだ。'11年には1800万ドル(約19億8000万円)あった年俸を考えればわずか4.17%に過ぎないが、今のイチローにとってはお金は問題ではない。
大切なことは大好きなマリナーズでプレーすること。そのチャンスを再び得た背番号51は昨年との大きな違いを喜んでいる。
イチローにとって最も大事な作業。
昨季、マリナーズとの契約が決まったのは3月7日のことだった。キャンプインからは既に20日ほどが経過し、開幕までは3週間ほどしかない時期だった。準備は整うのか。そのことを問うと彼は笑いながら答えた。
「間に合わせるだけですよ」
だが、悲劇が続いた。
14日のオープン戦で右ふくらはぎを痛めると23日のマイナーリーガーとの練習試合では右側頭部に死球を受けた。結果、オープン戦の出場はわずか5試合。打席数は12にとどまり、無安打に終わった。
準備を整えることはイチローにとって最も大事な作業だ。それでもイチローはこの状況下、下を向くことはなかった。
「あの時に戻りたいと言うのはあるけど、悪いことが起こった時はどんな時でもそうだから。でも、あれをやっておけば良かった、と言うことは一切ないですね」
現実を受け止め、できることはすべてやったと言い切れる強さは誰にも真似できないと感じたが、打撃技術の構築は足し算とするイチローにとって、これほどに厳しいスプリングトレーニングもなかった。
結果、出場15試合。44打数9安打、打率.205。5月2日のアスレチックス戦を最後にイチローはその立場を球団会長付き特別補佐へと変えた。