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殻を破ったフィギュア坂本花織。
「私は世界一になりたいんです」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2019/01/20 10:00
3月に行なわれる世界選手権へ向け、意気込みを色紙にぶつけてくれた。
殻を破ってめっちゃ見ました。
世界選手権代表を決めた滑りは「殻を破った」演技でもあった。
「今までは視線はジャッジさんの下か上、みたいな感じで、最後のポーズ以外は絶対に目を合わせませんでした。ジュニアの頃は目を合わせるのが恥ずかしくて。その後は、目を合わせて笑いかけても笑い返してくれないので、怖いな、と思ってしまって」
でも今回は違った。
「めっちゃ怖かったです。でも、殻を破ってめっちゃ見ました。滑る前から、『絶対に見続ける』と決めていました。少しでも点につながれば、と」
契機になったのは、振り付けを担当したブノワ・リショーの言葉だった。4位となった12月上旬のグランプリファイナル後、坂本はステップをはじめ、振り付けの手直しを受けた。
「そのときに『視線が大事。ジャンプを跳ぶ前にしっかりジャッジを見なさい』と言われました」
私は世界一になりたい。
何よりも後押しになったのは「世界一になるためにはそこまでしないと駄目」というリショーの言葉だった。
「私は世界一になりたいし、やってやるしかない、と」
坂本はトップへの思いを改めて明言した。
「ブノワ先生には、昨シーズンから『僕は世界一にさせたい』と言われていて、今シーズンはより言われるようになりました。でも、『花織は本気でなろうとしている感じがしない』と怒られていました。ブノワ先生だけでなく、(指導する)中野(園子)先生にも『世界一になったら世界が変わる』と言われていました」
ただ、今までは、そのまま受け入れられなかった。
「世界一にはなりたいけれど、(三原)舞依ちゃんや強い選手もたくさんいるので、なかなか簡単になれるもんじゃない、無理、と思っていました」
だが全日本は「本気でやってみようと思いました」と吹っ切った。意識の変化がもたらした優勝だった。