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『逃げ』
パズルを解くような論理展開。
ロードレース全日本選手権の記録。 

text by

津村記久子

津村記久子Kikuko Tsumura

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posted2019/01/11 07:00

『逃げ』パズルを解くような論理展開。ロードレース全日本選手権の記録。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『逃げ』佐藤喬著 小学館文庫 570円+税

 海外のサイクルロードレースはよくテレビで観ている。風景は興味深いし、スタートしたらとにかくゴールまで走るという直線性も、自分が観るのに向いている。牽制もマッチアップも、他の選手を絶望させる強烈なアタックも、すべてある地点からある地点に向かう途上で行われる。百人以上の選手が同じスタートラインに立つ、というのも非常に特徴的だと思う。対戦競技ならその試合についての思惑は大きく分けて二つだが、ロードレースはチームの数だけ存在する。さらに言うなら仲間の数だけ事態は複雑化する。

「自転車は集団で固まって走ると体力の消耗が少ない」ということをまず大前提として、その集団から抜け出して先行し、勝利を狙うなり、仲間がやってくるのを待つなりする、という作戦があって、それを「逃げ」という。本書はその「逃げ」で勝負が決まった二〇一四年の全日本選手権のレースを、スタートからゴールまで詳らかにする。

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