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“フットサル最強校”から選手権8強。
雪国・帝京長岡の強化策が面白い。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2019/01/13 11:00
テクニカルかつ連動性あふれるサッカーを展開した帝京長岡。FW晴山岬はそのフィニッシャーとしてプレーした。
豪雪地帯だからこその練習。
帝京長岡の名を知られるようになったのは2012年度大会のこと。小塚和季(現ヴァンフォーレ甲府)らを擁し、足元のテクニックで勝負するスタイルは観る者を驚かせた。
それはテレビで観戦した県内のサッカー少年に勇気を与えるものだった。DF長渡彗汰(けいた)は当時についてこう話していた。
「小塚さん達の代がベスト8に入ったことで、やればできると思っていたし。勇気をもらいましたね。ああいうプレーをしていれば会場も沸くし『自分たちもいつか、ああなろう』と思えるありがたい存在でした」
彼らの土台にあるのはフットサルだ。
長岡市は積雪量が50cmを超えることも珍しくない豪雪地帯。それだけに冬季の練習はグラウンド整備すら難しいという。それを解決するために活用されているのが、体育館でできるフットサルである。
フットサルはサッカーよりも狭いスペースでプレーし、ボールを扱う回数も自然と多くなる。そこで足裏でのボールタッチなどドリブルが磨かれるメリットがある。
フットサルは別種目ではない。
「日韓W杯やアルビレックス新潟の影響もあってサッカー熱が高まりました。その中で私たちとしてはフットサルを別種目とはとらえておらず、サッカーの一環として強化を図っています」
古沢監督はこう語っていた。県全体で見てもジュニアユース世代からフットサルに触れた選手が増えているそうで、育成で外せない要素となるのは間違いない。
余談だが、矢板中央にも大塚尋斗というFWが「U-19フットサル日本代表」という肩書を持ち、サッカーとフットサルの二刀流に挑んでいるそうだ。日本でもフットサルが成長の手段として有効活用され始めた証拠だろう。
話は戻って、帝京長岡の強化メソッドは熱心な高校サッカーファンなら知るところだ。ただ冒頭に記した驚きとは、フットサルで勝利の味を覚えたことだ。
それは“敗北での産物”でもあった。