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家長昭博、川崎加入2年目のMVP。
異端のズレからとんでもない進化。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/12/21 11:30
2018年のMVPに輝いた家長昭博。JアウォーズではG大阪ジュニアユースで盟友だった本田圭佑から祝福メッセージが贈られた。
今季ラストプレーが象徴的。
その象徴が2018年の川崎フロンターレのラストプレーだろう。
J1最終節・ジュビロ磐田戦の同点で迎えた試合終盤。引き分けで残留が決まる相手は、自陣に人数を割いてなりふり構わず守り続けていたが、あと数十秒でタイムアップという時間帯で仕事を果たしたのが、他ならぬ家長だった。
一瞬の隙を見てブロックの間で登里享平からの縦パスを引き出し、左足でボールを絶妙にコントロール。対応に遅れた大南拓磨を素早いターンで振り切ると、力強く加速した。
そのままゴール前へ侵入して、中央に走りこむ知念慶に向けてクロス。これが劇的な逆転弾となるオウンゴールを誘ったのだが、彼の上手さとゲームを決める強さが凝縮された一撃だったといえるだろう。残されたプレー時間は、ただの再開の儀式でしかなく、直後に今シーズンの終幕を告げる笛が鳴り響いている。
冷静に淡々と、貪欲に。
後日、家長昭博にあのラストプレーについて、思わず尋ねてみた。「終了間際のあの時間帯に、なんであんなプレーができるんですか」と。驚きを込めて聞いたつもりだったが、彼はいつものように「あー」とうなずきながら、冷静なトーンで淡々と言葉を並べてくれた。
「残り少なかったので、自分が行かなくてはいけないかなと思っていました。試合の展開的にインテンシティ(強度)も高くなかったので。最後は相手も後ろに張り付きっぱなしで、体力的にも厳しいゲームではなかったですね。でも、常日頃言われているのは、ああいうことだと思います。もっともっと、ああいうシーンが出るように頑張っていきたい」
特に味のあるコメントを引き出せたわけではない。だが、ひとつ言えるのは、家長は連覇してもなお、現状に何も満足していないということだ。プレー中の表情と変わらぬポーカーフェイスで語るその姿からは、そんな貪欲さが感じられた。