オリンピックへの道BACK NUMBER
伊藤美誠が選ばれた権威ある表彰。
他者からの刺激を力に変える能力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/12/17 17:00
2015年のブレークスルー賞受賞に続き、今年はスターアワードにノミネート。伊藤美誠は名実ともにスターになった。
2017年は平野の年だった。
思えば、今シーズンの伊藤の強さの背景には、小さな頃から切磋琢磨してきた平野美宇の存在があった。
2017年は平野の年だった。1月に全日本選手権シングルスを最年少で制し、世界選手権では日本女子48年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得するなど席巻。
かたや伊藤は、全日本選手権の5回戦で敗れた後も調子が上がらず、常に一歩置いていかれた気がしていたという。
しかし、その苦境で立ち止まることなく、自分の力でプラスに切り替えた。
トレーナーの指導を受けて地道にフィジカルの改善に努め、フットワークの強化も図った。リオデジャネイロ五輪後、気持ちの面で盛り上がりきらない面もあったが、それも払拭された。
技術的にも、基礎の練習から意欲的に取り組んだ。回転量の多いバックドライブ、あるいはバックハンドの無回転など多彩な返球が可能になり、巧みな組み立てを繰り出すようになった。
それらが、2018年の進化と好成績につながっている。
そして他の選手に刺激を受けて飛躍してきたからこそ、中国の選手たちからのマークも成長の糧にできると確信し、歓迎する。
尊敬する福原愛の引退を受けて。
また10月には、長年日本卓球界を牽引してきた福原愛が引退を発表した。
ともに出場し、団体戦で銅メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪では、歳下の自分がプレーしやすいように心がけ、おにぎりを作ってくれた福原の気遣いが今も心に残り、感謝の念も抱いている。
「今、日本で卓球がこんなに盛り上がっているのも福原さんのおかげだと思います。そして、そんな卓球人気の中で私がプレーできているのも福原さんのおかげだと感謝しています。大先輩である福原さんからのエールを受け、私も卓球界に貢献できるよう頑張ります」
2018年も終わろうとしている。今年を締めくくる大会である「ITTFグランドファイナル」シングルスの試合が13日に行われ、世界ランク8位で台湾のエース鄭怡静に3-4のフルゲームの末に敗れた。それでも、翌日に行われた早田ひなとのダブルス準決勝では地元韓国ペアを破り、16日に行われた決勝も制して、昨年準優勝に終わった雪辱を晴らした。まさに有終の美を飾ったと言えるだろう。
しかし年明けには全日本選手権があり、大会は途切れなく続いていく。
2019年、伊藤はどのような姿を見せるだろうか。第一人者の後を継いでいきたいという自覚とともに、自らの成長を信じて、きっと歩んでいく。